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店主日誌
店主日誌:185
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2018年06月19日
 
お客様二人(+アシスタントの店主)による恒例のカートリッジ会も、若手メンバーの方が地元に戻られてからは年1~2回ほどのペースになりましたが、今回は先日のアナログオーディオフェアに合わせてわざわざ1泊でお越し下さり、1日目フェア見学、2日目にカートリッジ会というハード(?)スケジュールをこなして下さいました。

お二人がカートリッジの詰まった専用ケースを開いてずらりと並べると、たちまちテーブルの上は満員状態。それでもまだヴェテランメンバーのキャリングバッグにはそれ以上のケースが出せないで残っています..。
まずは極上寿しの如く色とりどりに並んだカートリッジを眺めながら歓談。

そうこうするうちにお客様が一人ご来店に。
テーブルの上を見るや、そのお客さまも加わってさっそく3人でカートリッジ談義が始まります。
実はこのお客さまも愛知県からアナログオーディオフェアを見物に来られ、その足でせっかくならと私どもまで足を延ばして頂いたのでした。
初めてお越しのお客様でしたが、話題が合うと他人も知人もありません、皆オーディオ仲間、狭いので全員が座ることが出来ずに4人とも立ったままで盛り上がります。

では何かかけましょう、ということで、愛知の新メンバー(?)が買って帰るつもりの「ベイシー・ビッグ・バンド」を、まず手始めにドイツのクリアオーディオ、Aurum Classic で鳴らします。名前のとおりクリアで鳴りっぷりの良いビッグバンドが心地いい。




次はちょっと珍しいデンマークはB&OのMMC6000。
かけたのはメニューインとシルヴェストリによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。先ほどとは打って変わって奥ゆかしい、いかにもヨーロッパ的な響きがひろがります。



(from AUDIO HERITAGE)

同じ盤を今度はビクターのMC-1 で。今までの2つはMMでしたが、今度はMC型です。
さすが名機、さっとあたりが晴れ渡り、現在のMCカートリッジにも聴き劣りせぬ再生ぶりに一同納得。



さて、次は今回のメインイベント、ヴェテラン・メンバーが最近揃えた旧東芝Aurex のコンデンサー・カートリッジ&専用イコライザーの登場です(Aurex 403S+SZ-1000)。




これがまたいい。
思わず「滑らか!」と口走ってしまいました。そうなんです、音がスムーズで自然。とても40年前の製品とは思えないフレッシュなサウンドです。
これを聴くと、DS Audio の光電カートリッジのように、かつて存在したコンデンサー型カートリッジも、どこかが今の技術で新しく作ってくれないものかと思ってしまいます。
因みにコンデンサー・カートリッジも光電カートリッジと同じく原理的に電磁変換をしない「振幅比例型」です。その点でもメリットは大きいのです。

最後はガラッと趣を変えて「モノラル盤を聴こう!」コーナー。
使用するのは米GE のVRⅡ、所謂バリレラ・カートリッジです。まだSPとLPが混在している時期の製品で、上に大きく出っ張っている赤いノブで、2つ着いているSP用とLP用の針をくるっと180°回して取り替えることでどちらのレコードもかけることが出来ます。

聴いたレコードは、どれも大変珍しいものばかり。若手メンバーがこの2日間に都内を駆け巡って仕入れたものです。フルトヴェングラー以外は店主も知らなかったレーベル。


米UNICORN エルンスト・レヴィ(Pf)

米Program Records ベートーヴェン「大公」/シュタルケル他

アルゼンチン CID ブラームス チェロソナタ/シュタルケル

これに、英HMV のフルトヴェングラー指揮/ベートーヴェン「フィデリオ」序曲

また、参考出品としてこれまた稀少な東芝Aurex 製光電カートリッジも。但しまだ専用イコライザーアンプが未入手で、残念ながら眺めるだけ。でもその丸っこい形は一度見たら忘れられません。どうしてもイコライザーが入手出来ないようならば作ってしまうかも、との頼もしい発言も。行方を見守りましょう。



今回は一時飛び入りのお仲間も加わって、ひときわ楽しいひと時となりました。
ありがとうございました。
2018年06月13日
 

 
毎回楽しみにしている「アナログオーディオフェア」に行ってきました。
今年は当店「カートリッジ会」(お客様二人の自主運営)のメンバーお二人と一緒に見学です。
3人で早めのランチをとってひとしきり歓談してから、いざ会場へ。

今までは玄関のある1階にブースはありませんでしたが、今回は初出展のアスカが部屋を設けて展示。純マグネシウムを使ったアウタースタビライザーをはじめとするアナログ・アクセサリーを揃えています。
なかなか見たり聴いたりすることが出来ないからか、小さな部屋は満員状態。初めての製品ばかりなので、皆熱心に質問をしていました。
アスカ製品試聴ご希望の方は、どうぞ当店にお申し付け下さい。

次は、今のうちに行かないと入れなくなるということで、3階のイベント会場へ移動。12時半から「最新のMCカートリッジを聴く」(音元出版主催、小原由夫氏)が始まります。
実は店主、混むのと時間を食うのが嫌で、イベント・試聴会といったものにはほとんど参加しません。むしろ、イベントに人が入って他が空いているうちにしめしめと一気に回るのが常套手段です。
でも今回はカートリッジ会メンバーと一緒ということもあり、色々聴き比べも悪くないと参加してみたのですが、ビックリ。まだ20分前なのにほぼ満員で席は無し、後方の立ち見もすでに満員で入るのに一苦労です。かなり甘かった..。
聴いたのは、47研究所,ZYX,PLATANUS,ACCUPHASE,GRADO,PHASEMATION。これでまだ前半の半分ですが、立ちっぱなしということもあり息苦しくなって出てしまいました。
さすがに各社代表選手を立ててきているだけあり、甲乙つけ難く、いずれも水準の高い再生で聴かせました。
小原氏は、これだけ大勢入ると聴く位置が悪い場合も多いので、空間表現よりは音色の違いを聴き取って欲しい、と言っていましたが、意外と音色よりは音場の広がり感などの違いのほうが聴き取れたように思います。

さて追い出されるように出た後はひとつ下の階へ。2階の大部屋は店主のお気に入りコーナー。小規模メーカーが多数、露天商のごとく机を並べて待っています。
スピーカーを使っての音出しは出来ない部屋ですが、ここでしかお目にかかれないメーカーがほとんどで、直接制作者に話を聴くことが出来るのがメリットです。
興味津々の試作品を展示していたのが47研究所
「昨日工場から出来てきたばかりです」と言うのが、スイスのThales と同様の原理でトレースするリニアトラッキング・アーム。本生産品はさらに煮詰めて軽量化するとのこと。まだ少しかかりそうですが、是非製品化してもらいたいものです。

最も長居したのがAnalog Relax、あのKOI-OTO カートリッジのメーカーです。
今回は渾身の力作、トップエンドモデルのEX1 を初出品。KOI-OTO を超えた、クラシック・ファンをも振り向かせるカートリッジだそう。“いわゆる「いい音」の向こう側を知りたくありませんか?”というキャッチフレーズも決めてくれています。
この新作も含めた3モデルをヘッドフォンで一気聴き。どれも「濃い」「いい音」で、どれか選べと言われると困ってしまいます。
これも試聴されたい方はどうぞ、私どもにお申し付け下さい。

他にも、アクセサリーが豊富に揃うフルテック,ラックやプレーヤー・キャビネットのみならず、プレーヤーの試作機も展示していたマスタツオーディオ,高剛性アームのGLANZ,真空管アンプの上杉研究所ZYX など、うちで得意な製品ばかり、いつまで居てもきりがありません。

4階はお馴染のメーカーが並びます。DS Audioアイコールトライオードエアータイトなどですが、もうよく分かっているので表敬訪問のみで失礼しました。
最後は一番上の5階。
ラックスマンは新発売の管球プリ&パワー(CL-38uC&MQ-88uC)で、これも新しいFOCAL のスピーカー KANTA No2 を大変心地良い音で鳴らしていました。これは意外と良い組み合わせです。

楫音舎のPLATANUSでは朗報がひとつ。
現行カートリッジは2.0S ですが、これに弟分、3.5S が加わりました。
2.0S と同じ磁気回路をもちながら、自重とコストをスリム化、24万円とかなり購入し易い価格を実現しました。
コアレス・ストレートフラックス方式のカートリッジで気を吐くトップウィングでは、これらのカートリッジとともに台湾のTien Audio の新しいプレーヤー TT5 をデモしていました。これは現行のTT3 からのグレードアップも可能というコンセプトがユニークです。
SAEC には話題の新トーンアームWE-4700 が参考展示されるというので楽しみに見に行ったのですが、展示用ケースが間に合わないとかで残念ながら見られず。せっかくの機会で本体はあるのですから、何とかして見せてもらいたかった。2日目の日曜日には展示したのでしょうか?

気が付くとあっという間に6時。今回(土曜日)はとにかくどこのブースも混んでいて大盛況、活気に溢れていました。
2018年06月06日
 

 
とうとう今日、関東地方も梅雨入りしました。
朝からしとしとと煮え切らない小雨が降り続き、突然いかにもの入り方です。この1週間ほど、とても天気が良く、湿気も低くてなかなか過ごしやすい気候だっただけに残念。いいことはそう長続きはしません。
店には毎日自転車(ママチャリ)で通っているのですが、乗って行けない日も多くなりそうです。

今日朝食をとりながらTVを観ていると、気象予報士の方が、「室町時代に全く雨の降らない日照りが続き、雨乞いに梅の実を供えたところ、大雨が降った」と梅雨の由来を話していました。
へえ、そうなんだ、と試しにインターネットで検索してみると、「中国から梅雨(ばいう)として伝わり、江戸時代頃に“つゆ”と呼ばれるようになった」、また「梅の実の熟す時期の雨」(語源由来辞典)などとあり、要するに諸説あって本当のところはよく分からないということのようです。ただ中国でも梅雨と書くというのですから、日本で梅を供えたから、というのは少々怪しく思えます。
「つゆ」という読み方にも諸説あるようです。
2018年06月03日
 

 
現在、世界的に最も注目を集めるオーディオショウであるミュンヘンのハイエンド・ショウから、耳寄りなニュースが届きました。
なんとあのSAEC アームが復活を果たすというのです。
店主はかねてよりSAEC アーム復活を強く望んでいた一人ですが、当時の設計・製作者が亡き今、ほぼ可能性は無いだろうと思っておりました。ただ、図面等、当時の資料は残っているはずですから、再び製造すること自体は不可能ではないはずです。要は、現在のアナログ製品の常で、販売量(=生産量)とコストの問題です。
それでも敢えて再び作ることを決めた背景には、SAEC のアームが今でも世界的にもトップクラスの人気があり、コストがかかってもある程度の販売が見込めるとの判断があったのでしょう。ドイツで最初に発表されたことからも分かるように、当然ながら国内のみではなく、むしろ海外のハイエンド市場での販売を中心に見越しているはずです。

今回ミュンヘンで発表されたWE-4700 は40年近く前のWE-407/23 を基に作られています。写真で見較べると実に細部まで正確に再現されているように見えます。
レポートによると、外見からは分からない部分で、最先端の技術を駆使することによって、オリジナルでは複数に分かれていた部品を一体加工したり、ダブルナイフエッジを始めとする各パーツの加工精度を向上させるなど、中身はいっそうの進化を遂げているといいます。

復活を現実にした立役者は、長岡市にある内野精工(株)。
「手のひらに乗るサイズなら、どんな素材でも形にします」という、多数のNC複合自動加工機,NC旋盤等を駆使して、今までオーディオ製品,医療・光学部品などを手掛けてきた微細精密加工を得意とする企業です。
 

 
今秋~年内に発売が予定されているとのことですが、気になるお値段は$9000 ほどになる見込みだそうです。
2018年05月01日
 
いささかショックなニュースが飛び込んできました。
最盛期にはMMカートリッジと言えばシュアーというほど世界市場を席巻していた名門SHURE が、フォノカートリッジの生産から撤退を決めたというのです。
以下、Phileweb の記事からご紹介;

『SHURE、フォノカートリッジから撤退/「苦渋の決断」、今夏で生産終了』

同社は撤退の理由について、
「近年、製造するうえで自社の基準を維持することが困難になり、コストや納入でもユーザーの期待に応えることができなくなってきた」と説明。
「検討に検討を重ねた結果、2018年夏にSHUREフォノ製品の生産を終了するという苦渋の決断をするに至った。
この決断が大切なチャネルパートナーやエンドユーザーの皆様のご失望を招くであろうことは重々承知している。しかし、厳しさを増す状況の下で生産を続けるよりも部門を閉鎖することが、『SHUREフォノ』の輝かしい歴史を守る上で最善の方法であるとの結論に達した」と説明している。
2018年04月16日
 

Gunter Loibl
 
全く新しいマスタリング技術(スタンパー制作)の登場です。
ヴィニールをプレスする「型」であるスタンパーを制作するには今まで;

1)アルミニウム板にラッカーをコーティングし、それにカッティングマシンのカッターを使って音溝を刻んで「ラッカー盤」を作る。
2)ラッカー盤は耐久性が無いので、表面に銀メッキとさらに厚いニッケルメッキをかけ、これを剥がすと凸型の「メタルマスター」が出来る。
3)メタルマスターに厚く銅メッキをかけて剥がすと凹型の「マザー」が出来る。
4)マザーにニッケルやクロムの厚いメッキをかけて剥がすと、ようやく凸型の量産用「スタンパー」が完成。

これだけの行程を経てようやくスタンパーが完成するわけですから、音溝の形状がわずかに鈍るのも当然と言えます。
それをHD Vinyl (High Definition Vinyl)では最初から直接金属スタンパーを刻んで作ってしまうというのです(実際は金属より硬いセラミック素材とコメントされています)。
新素材で超硬いカッターでも作ったの? いいえ、そうではありません、全くの発想の転換です。

3D地形図とレーザー加工技術を組み合わせた製造方法で、パソコンで生成した3Dモデリング・データでレコードに刻む音溝の形状を細かく調整する作業を行い、その後、そのデータをもとにレーザー彫刻機で溝を刻んでスタンパーを作るというのです。
つまりミクロの世界の山脈と渓谷の地形図を3Dで制作し、レーザーカッターでその通りの金属モデルを作る、というようなわけです。
まさに21世紀、現代のアナログ・レコード技術ではありませんか。
デジタル・データで刻んでいるからアナログ・レコードとは言えないんじゃないの? という声も聞こえてきそうですが、確かに基となる音溝の3Dデータはデジタルですが、マシンを動作させる操作データでしかなく、それによってレーザーで刻んで出来た音溝は物理的に連続した形状で、従来の音溝と変わることはありません。ただ、それが遥かに高精度で刻まれるということでしょう。

この画期的な特許技術を開発したのはオーストリアの音楽関連ソフトウェア開発ベンチャー、Rebeat Digital 。
同社は、この方法を採用することで、レコードをより正確に、また音声情報の損失を少なくして記録することが可能になるため、従来の方法で作られたレコードよりも、30%ダイナミック・レンジが広く、30%録音時間が長く、そしてより忠実な音の再生が可能なレコードが製造出来るとしています。
この新技術はまた、スタンパー素材の耐久性が極めて高いため摩耗が少なく、最初から最後のプレスまでほとんど劣化無しにプレスが可能。つまり初期プレスを血眼になって探す心配もない、ということです。
もちろんこの方法で出来上がったレコードは今までと何ら変わりませんから、HD Vinyl は普通のレコードプレーヤーで再生可能なのは言うまでもありません。

Rebeat Digital は、このHD Vinyl の技術に480万ドル(約5億円)の投資を受けたとされ、創設者でありCEOの Günter Loibl 氏(写真)は、HD Vinyl が早ければ2019年にも市場に流通する可能性があるとしています。
Rebeat Digital は、この新技術のために60万ドルの大型レーザーシステムを注文しており、7月までに納品される予定で、その後、テストや調整を行い、2019年夏頃に最初のHD Vinyl が店舗に並ぶ計画だそうです。期待して見守りたいですね。
(sources: amass, HD Vinyl, meinbezirk.at)
2018年04月14日
 
S.カンブルラン指揮する読売日本交響楽団のサントリーホールでの演奏会を聴きました。
メインプログラムはストラヴィンスキーの「春の祭典」。気になる指揮者が振るとなると、つい聴きに行きたくなる曲目です。

さて今日の演奏はというと、気迫横溢、生気に溢れ、スケール大きく、実に充実した力演でした。久々にガッツのあるハルサイを聴いたという印象です。
カンブルラン、70歳という年齢を全く感じさせず、8年にわたり築き上げてきた信頼の賜物か、抜群の一体感が見事でした。
その常任もいよいよこの’18年のシーズンが最後だそうで、寂しい気がします。アルブレヒト(独),スクロヴァチェフスキー(ポーランド),そしてカンブルラン(仏)と第一級の実力派を迎えてきた読響、次代常任にははたして誰を?

今回のソリストにはクラリネットのポール・メイエが登場、とくにドビュッシーの第1ラプソディは変幻自在、聴きものでした。
2018年04月02日
 
たまたま見かけた去年の記事でタイムリーな話題ではないものの、ミッション自体はまだ数年間続くそうですので取り上げてみました。



太陽系内の遥か彼方と太陽系外宇宙探査を目的としたNASA の「ボイジャー計画」として、探査衛星ボイジャー1号と2号が約2週間の間隔を置いて打ち上げられたのは40年以上前、1977年のことです。
40周年に当たる昨年9月の時点で1号はすでに太陽系外に出て、2号ももう外へ飛び出したことでしょう。1号は史上最遠まで到達した宇宙船となりました。
電源電池が弱ってきているためカメラなどはだいぶ前に停止したものの、まだ5つほどの計測機が作動中で、今後まだ10年程度データが送られてくる見通しです。
因みにこの電源はプルトニウムの原子力電池だそうで、そうなると原子力衛星?

ところで覚えておられる方も多いと思いますが、地球外生命体が見つけてくれることを想定してボイジャーには地球のデータが収められています。



その記録媒体が何とアナログ・レコードなんですね(上の写真)。下はそのジャケット(アルミニウム製)で、カートリッジ針はこんなふうにかけて再生して下さい、といったイラストが描かれています。
ごく普通の溝の刻まれた12インチ盤で、但しヴィニールではなく銅製で、金メッキが施してあるため、まるでゴールドディスク。豪華仕様?ではなく表面保護のためでしょうが、銅でいいの?とは思いますが、真空で湿気もない宇宙空間では腐食の心配も無いのでしょう。
何と10億年以上(!)の耐久性があるそうですが、さすがは我らのアナログ・レコード。この1977年時点ではまだCDは出てきていないので、と言うことは出来ますが、デジタル技術はあったわけで、情報量や仕様は別として耐久性ではアナログディスクに分があったということでしょう。それは今でも変わっていないようです。

ゴールデン・レコード作製にあたってCBS レコードはボルダーのJVC カッティングセンターにラッカーマスターのカッティングを依頼、これを米カリフォルニアにあったJAMES G. LEE RECORD PROCESSING 社へ送ってメタル製のレコード8枚が製作されました。NASA のサイトにここでの製造工程の写真が載っていますのでご覧下さい。アナログ・レコードそのものです。
アメリカも下町ロケット?
https://voyager.jpl.nasa.gov/golden-record/making-of-the-golden-record/

ボイジャーにはこのレコードを再生するプレーヤーも載せられています。写真の女性が操作しているものかは分かりませんが。


NASA の公式サイトより

レコードには音楽や様々な音の他(音声部分は16・2/3回転)、画像もアナログデータとして記録されています。収録されているクラシック曲だけに絞ってご紹介すると;

バッハ/ブランデンブルク協奏曲第2番(K.リヒター)
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番(A.グリュミオー)
バッハ/平均律クラヴィーア曲集から(G.グールド)
モーツァルト/魔笛から(E.モーザー, サヴァリッシュ)
ベートーヴェン/運命(O.クレンペラー)
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番から(ブダペストSQ)
ストラヴィンスキー/春の祭典(作曲者指揮)

収録する内容はコーネル大のカール・セーガン博士(懐かしい!)を長とする委員会で決められたそうですが、音楽は誰の好みだったのでしょうね。

ついでにもうひとつ、40周年を記念してゴールデン・レコードの復刻盤が発売されました。
金色っぽいカラーレコードの3枚組に豪華なブックレットが付いて約1万2千円、まだタワーレコードで買えるようです。
遥かな宇宙の果てに思いを馳せて、あなたもいかがですか?

2018年02月16日
 
悪魔のトリル」という曲名は皆さん聞いたことがおありでしょう。
17世紀イタリアのヴァイオリニスト,作曲家、ジュゼッペ・タルティーニの作曲したヴァイオリン・ソナタの通称です。

私も学生の頃廉価盤で買った「バロック音楽名曲集」の中に収録されていたこの曲を聴いて、その謎めいた題名と、それにまつわるエピソードが強く印象に残っていました。それはこんな具合です;

「1713年のある夜、タルティーニは夢の中で悪魔と契約を結んだ。
悪魔にどんな音楽が出来るのか、彼は試してみようとヴァイオリンを渡すと、驚いたことに悪魔は実に見事に美しいソロを弾いてみせた。
感動のうちに目覚めた彼は、興奮冷めやらぬうちに聴いたばかりの悪魔の曲を何とかそれに近い形で五線紙に書き留め、『悪魔のソナタ』と名付けた。」

真偽のほどはともかく、聴いてみると確かにその名に相応しく、とりつかれたような狂おしいトリルを伴う旋律が、一度聴いたら耳から離れません。

タルティーニ(1692-1770、伊)は若い頃はフェンシングに打ち込んだり、駆け落ちをしたりと結構奔放な生活を送っていたようですが、後年はヴァイオリンの腕を磨き、国内はもとより国外でも自他ともに認める巨匠として広く知られ、ナルディーニをはじめとする多くの弟子を育てました。

「悪魔のトリル」はヴァイオリンとバッソ・コンティヌオ(通奏低音)のための3楽章から成るソナタで、題名のトリルは終楽章で登場します。

このアルバムでヴァイオリンを弾いているのはロベルト・ミケルッチ(1922-2010、伊)、イ・ムジチ合奏団のコンサートマスターを1967~72年の間務めたことで知られます。ソロの録音は珍しいですが、ここでは自国の大先達へのオマージュを込めて、この作曲家の真髄を聴かせてくれます。

流石はイタリア人、旋律美に溢れているのはヴィヴァルディとも共通しますが、もっと陰りを帯びてしっとりとした魅力にあふれた曲集となっています。
2018年01月20日
 
カートリッジ会、前回の第12回から1年間経って第13回を行うことが出来ました。

この会は、こよなくアナログを愛するヴェテランと若手二人のお客様(+準会員兼下働きの店主)で行なわれてきたのですが、昨年、若手メンバーが地元に戻ることになり、簡単にお越しになれないために休会状態となっていたのでした。
今回、新年会を兼ねてわざわざ新幹線を使って1泊で駆けつけて下さり、久々の再会となりました。

お二人が持ち寄ったカートリッジの中から、今回はまず参考出品(?)のDENON DL-103 GOLD と SONY XL-MC2。これはどちらも貴重な未使用品で、眺めるだけ。箱に入った新品です。
その後試聴は、順にSHURE V-15 Type3 のオリジナル針とJICO 針、初期型のDENON DL-103,ニートなど。

  

  

使用した盤は、米LONDON/アルヘンタ&ソリアーノのファリャ,TBM/菅野邦彦 LOVE IS A SPLENDORED THING,米CONTEMPORARY/アンドレ・プレヴィン KING SIZE!,EPIC/アン・バートン BALLADS & BURTON,DG/マイナルディ シューマン チェロ協奏曲など。

   

沢山聴きましたが、とにかく久々でしたので話のほうに花が咲き、あっという間の数時間でした。
お二人とも本当にありがとうございました。
2018年01月07日
 
今回の年末の第9には予定していた通り、カール・シューリヒトがパリ音楽音管弦楽団を振ったレコードを選びました。

これはご存じの通り、1957~58年に入れたベートーヴェン交響曲全集のなかのひとつですが、第9のみ後年、ステレオで録音されたテープが発見され、新たに発売となったものです。
英・米やドイツでも既にこの頃はステレオ録音が始められていましたが、なかではフランスは最もステレオへの移行が遅かったのです。
第9でステレオ録音が残されていたというのは、全集でも遅い時期であったのと('58年3月,5月)、独唱,合唱を含む大きな編成であったため実験的にステレオ収録も行っていたのではないかと考えられます。

特にこのANGEL 国内盤は第9、1曲をLP2枚、世界で唯一4面にわたってゆったりとカッティングされており貴重です。
 
さて演奏は、いつものシューリヒトらしく、決して停滞することなく快速なインテンポで進みますが、いつもよりダイナミクスの隈取が豊かで、ぐいぐい引っ張っていく気迫に満ち、まるでライヴ録音のよう。あっという間に全曲を聴き通していました。
2017年12月25日
 
 
 
皆さんのなかにはクリスマスに合わせてそれに相応しい音楽を聴いていらっしゃる方も多いと思います。 え?忘年会続きでそんな暇はない??

店主もクリスマス・イヴには毎年違った演奏のレコードでチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を聴くのを恒例としています。
今年は有名な演奏、カラヤン&ベルリン・フィル(ドイツ・グラモフォン、1966年録音)で組曲版を聴きました。
裏には(実はこちらが第1面ですが)同じ作曲家の「弦楽セレナード」が収められていますので、これは明日聴く予定です。

さらに今年は何日か前から、バッハの「クリスマス・オラトリオ」(3枚組、DECCA/LONDON、1966年録音)を半面ずつ、久々に全曲を聴きました。演奏はカール・ミュンヒンガー指揮するシュトゥットガルト室内管弦楽団&リューベック・カントライ、そしてソリスト達。
元々この曲は6つのカンタータをまとめたような形態で、レコードの片面ずつ、すなわち1曲ずつ聴いてもぶつ切りの違和感は無いのです。
彼の受難曲などとは違って、いかにもキリストの降誕を祝う祝典的な気分に溢れ、流石は名作、申し分ない演奏&録音もあって飽きることがありませんでした。

さて、この後大みそかまでには「第9」を、毎年違った演奏で聴くのも恒例としていますが、今年はカール・シューリヒトの振った録音をかける予定です。
2017年12月07日
 
日本フィルハーモニー交響楽団の公開リハーサルを観に行ってきました。

日フィルの本拠地(公演と練習を行うホームグラウンド)は、我が地元の誇る杉並公会堂。当店から歩いて10分ほどのところにあります。

日フィルは1994年から杉並区と提携して様々な活動を行っていますが、杉並区の文化事業として本番前の実際の練習を公開する公開リハーサルを実施しています。
いつか見たいと思っていたのですが、今回は休業日の木曜にあたったのでラッキーとばかリ行って参りました。
当日先着600名まで、無料です。

まあ、平日の午後1時からでは勤め人は無理、暇人でない限り行けないし、わざわざ練習を見に来る人なんてそんなにはいないだろう、などと高をくくって行ったのが間違い! 着いてみてビックリ、3列に並んだ行列がロビー内で一回折れてもうかなりの人数並んでいます。これでもだいぶ早めに来たのですが。

本日の指揮者は井上道義氏。今年で71歳になりますがエネルギッシュで全く歳を感じさせないどころか、益々自由闊達。
そんなところは今回の公演の選曲にも表れています;

ラヴェル/「マ・メール・ロワ」組曲
八村義夫/錯乱の論理
​ベルリオーズ/幻想交響曲

この日のリハーサルでは上記から「錯乱の論理」と幻想交響曲の第4楽章「断頭台への行進」が取り上げられました。

練習開始時間前には楽員全員が出てきて各人真剣に音出し練習しているので、全体の音量たるや相当なもの、本番前にいつもやる、あのピッチ合わせとは比べ物にならない騒々しさです。
その後開始時間になり、井上さんが出てきて一言二言言ってからそのまま「錯乱の論理」を始めたら、おや?先ほど聞いていた練習音と同じように聞こえるではありませんか(失礼!)。
まあ、これは素人の大雑把な感覚ですから、もちろんちゃんと聞く耳を持った方が聴けば分かるのでしょうが、題名が題名ですから、敢えて混乱したようになっているところもあるのかもしれません。
全曲を通して演奏(と言っても8分ほど)した後、指揮者が気の付いたポイントをいくつか繰り返し練習していくと、同じところを演奏しても、おや?さっきより分かり易いように感じます。
最初に弾いたのはまずとにかく音出し程度、慣らし運転みたいなもので、指揮者が与えるちょっとしたヒントに皆の意識が収斂していき、次第にピントが合って、私のような聴衆にも分かり易くなったように聴こえる、そんな感じです。

最初の通しが終わった時、井上さんが客席に振り返って「錯乱した?!」と問い掛けましたが、決して錯乱したようには聞こえませんでした。ただ所謂正真の「ゲンダイオンガク」ですから、よく分かったか、というとそれはノー。
この後休憩に入りましたが、その間井上さん、私たちに向かってマイクを持ってワンポイント解説もしてくれました。
井上さんは桐朋学園在学中に八村さんにも習ったそうですが、彼は「変わった人」だったとか。

休憩後は、ベルリオーズ。
これもまず一回通して弾いてから、いくつかポイントを押さえていきます。でも楽譜の細かい点を挙げて整えていくというよりは、もっと主観的,感覚的な指示によって音楽の表現を完成させていくといったやり方です。
例えば、始まってすぐ、ティンパニと金管の掛け合いの後大きな爆発があって、弦楽合奏が引きずるように弾くところがありますが、ここは、
「首切り台に元気に上がっては行かないでしょう、ここは嫌々行きたくない、上がりたくないといった気分で」
と言ってそれを身振りでも示します。そんな感じで楽員とやり取りしながら和やかに進んでいきます。
井上流のリハーサルをほんのさわりですが垣間見られて、ちょうど1時間得難い体験をさせて頂きました。

また是非参加してみたいと思います。
2017年12月01日
 



SOULNOTE ブランドを擁する(株)CSR 社にお邪魔してきました。
本社は神奈川県 相模大野にあります。これで2度目となりますが、今回は小田急線で向かいました。

お目当ては新しく発売となったフォノイコライザー・アンプ、E-2。同社の試聴室で聴かせて頂きます。
ご挨拶もそこそこに、着くとそのまま2階の試聴室(兼、音質検討室)へ。

ありました、ドーンと大型プリメインアンプと見紛うばかりのフォノイコ、E-2。威風堂々、これだけ立派なフォノイコはそうはありません。50万円の高級機ではありますが、それ以上の風格があります。重さも20kg あります。
設計者の加藤氏から細部についての説明や開発秘話などを伺い、いざ試聴開始。
因みに使用カートリッジはまず、お馴染みDENON DL-103、スピーカーはCSRが輸入する英PMC のMB2-SE。

聴かせて頂いたレコードは以下のとおり;

エヴァ・キャシディ/NIGHT BIRD
曲:AIN’T NO SUNSHINE

ビル・アヴァンス・トリオ/SUNDAY AT THE VILLAGE VANGUARD
曲:ALICE IN WONDERLAND

ブライアン・ブロンバーグ/WOOD
曲:COME TOGETHER

ラドカ・トネフ/FAIRYTALES
曲:THA MOON IS A HARSH MISTRESS

カール・ミュンヒンガー指揮 シュトゥットガルト室内管弦楽団
曲:ヴィヴァルディ「四季」~秋

小澤征爾指揮 パリ管弦楽団
曲:ストラヴィンスキー「火の鳥」~魔王カスチェイの凶悪な踊り

始めの3枚は加藤氏のお気に入り盤。
いずれもスカッと胸のすく音楽・録音で、設計者の意図が端的に理解出来る内容です。
とくに最初の2枚はライヴ収録なので、会場の雰囲気,空気感の再現が見事。

後半の3枚は営業・山神氏の盤。とくにノルウェイのヴォーカル、ラドカ・トネフは海外で調達した氏秘蔵の一枚ということで、初めて聴きましたが透明感ある少しひんやりした音色はいかにも北欧産。美しいジャケットもナイスで、このレコード欲しくなりました。

何のストレスもなくスピーカーから流れ出てくる音の奔流は、ソウルノート以外の何物でもありません。

実は今回、発売直前の新インテグレーテッド・アンプ A-2 (最終試作品)を組み合わせて聴かせて頂いたので、フォノイコE-2 だけではなく、このA-2 の功績も大きかったに違いありません。

クラシックもお願いします、とリクエストしたのに応じて取り出したるは最後の2枚。
ミュンヒンガーの「四季」はステレオ最初期1958年の録音。あの有名なイ・ムジチの四季と同時期(ミュンヒンガーが1年早い)で、両盤は日本の四季ブームの火付け役でした。

今回の盤はキングレコードの最初期ステレオ盤で'62年の発売。貴重なブルーバック・ジャケットです。
この頃は英DECCA が日本国内でのカッティング,マスタリングを許さず、英本国から直接送られたメタルマスターを使ってプレスされましたから、ビニールの材料以外は英国オリジナルと同等のプレスと言うことが出来ます。

かけてみると60年前の録音とは思えない生々しい音が飛び出してきましたが、少々高域寄りのバランスか? それならちょうど良いサンプルだから、試しにRIAA以外のイコライジング・カーヴを試してみましょう、ということになりました。

E-2 はフロントパネルの3つのノブで、Roll Off(高域減衰周波数)6種類,Turn Over(低域増幅周波数)4種類,Low Limit(超低域増幅制限)6種類をそれぞれを独立して変更出来るので、組み合わせでは何と144種類ものカーヴを作り出すことが出来るのです。
取説には3ページにわたり各レコードレーベルに対応したカーヴの適合表がありますので、これに従って3つのノブを所定の位置に合わせることで希望のカーヴ特性が得られます。

今回は試しにLONDON(DECCA の米国向けレーベル)の「LP」カーヴを試してみたところ、すっきり生々しくも聴き心地の自然なバランスとなりました、
このカーヴが合っているかは別にして、こうして自分の気に入ったカーヴで聴いてみるのもE-2 ならではの楽しみ方です。

小澤&パリ管の「火の鳥」は1972年のステレオ録音で国内プレス盤(ANGELレーベル)ですから、これは間違いなくRIAAカーヴ。パリ、サル・ワグラムの大きな(?)空間の感じられる録音を、大音量の箇所でも全く崩れることなく余裕をもって、フランスのオケらしいシャッキリとして鮮やかな音色で聴くことが出来ました。

以上は、先ほど申しましたようにDENON DL-103 で聴いているのですが、これが本当にDL-103?というくらいの再現です。

でもやはり上はありました。
E-2 のもう一つ大きな特徴が今話題のDS Audio の光電カートリッジを接続出来ることです。メーカーを超えた適合はこれが業界初の快挙です。
実はSOULNOTE とDS Audio、両者は同じ神奈川県の相模原市にあり、カートリッジは自転車で持って来てくれるそうです。カートリッジの出前なんて、世界でもここぐらい? 良い関係ですね。

さてカートリッジをDS Audio のDS002 に付け替えると、当然ながらさらに鮮やかで切れ込みもよく鮮明、光電カートリッジの特徴である低域の揺るぎなさ、などあらゆる点でハイスペックを感じるサウンドに深化しました。
でもこれ見よがしにHi-Fiをひけらかすことなく、演奏時の空気感,気配まで感じ取れる再現には敬服しました。
まさにカートリッジとフォノイコの目指すところが一致しているという印象です。E-2 を手に入れたなら光電カートリッジを組まないのは勿体ないな、と感じた次第。

ただ、光電カートリッジとの組み合わせではRIAAカーヴのみの再生となりますから、例えばモノラルとステレオ初期の盤では通常のMC,MMカートリッジを用いて場合によってイコライジングカーヴを調整、ステレオ安定期~現在の盤には光電カートリッジを使う、といった贅沢も良いのではないでしょうか。

とにかくレコード再生の可能性を積極的に追及する使い手にとって、これほど魅力的なフォノイコは、そうはありません。

それと先述のように新しいインテグレーテッドアンプA-2 がまた素晴らしいのは間違いないようで、これについてはさらに試してみたいと思います。

今後もSOULNOTE の上級シリーズから目が離せそうもありません。

帰りは山神氏のお奨め、「プラス410 円でロマンスカーに乗れますよ」に従って、町田⇒新宿間ではありますが、指定席にゆったり座って久方ぶりにロマンスカーの旅(?)をほんのひと時楽しむことが出来ました。

導入検討の方、試聴の手配も致しますのでご一報下さい。
2017年11月06日
 
今週木曜日から日曜日までの4日間、地元荻窪恒例の「荻窪音楽祭」が開催されます。
年一回開催のこの音楽祭、とくに今年は30回目ということで気合が入っており、メイン会場の杉並公会堂ではちょっと贅沢な「記念ガラ・コンサート」も開かれます(10日・金曜日)。

地域のあらゆるところで様々な規模のコンサートが行われるのが特徴で、杉並公会堂・大小ホールはもちろん、区民センター,郷土博物館,教会(4ヶ所),レストラン,カフェ・喫茶店,保健所・病院や銀行のロビー,スタジオ&ライヴスペース,駅前広場,駅ビル屋上,スポーツセンターなどなど。
ジャンルはクラシックに類するものに限られますが、奏者は一流のプロからアマチュア,子供参加の体験型まで様々。誰でも企画して音楽祭に参加することが出来ます。

運営するのは「クラシック音楽を楽しむ街・荻窪」の会、有志による自主運営で、多くのボランティアによって支えられています。
お近くの方、よろしければ足をお運び下さい。

「第30回荻窪音楽祭」
11月9日(木),10日(金),11日(土),12日(日)
http://www.ongakusai.com/index.html
2017年11月02日
 

 
少し前になりますが、東京三鷹市のICU(国際基督教大学)で行なわれたパイプオルガン講演会に行ってきました。
と言っても実は、そもそもはICUで開かれたバザーに行ったのですが、たまたま当日その会が開かれていたというわけで、お目当てのバザーのほうは外れ(家内談)でしたが、せっかくならと参加した講演会のほうは大変興味深く聞かせて頂きました。

ICUには当然ながら大学礼拝堂があり、大きな体育館ほどある建物で、内部は簡素ながら全面に木を活かしたホールのような会堂です。
正面には上の写真のようなパイプオルガンが備え付けられており、設置当時は国内最大規模のものだったそうです(オーストリア・リーガー社製)。

当日お話をして下さったのはICUオルガニストの菅 哲也氏(2枚目の写真)。
初心者向けにオルガンの歴史とパイプオルガンの仕組みについて、時にオルガンを弾いて実例を示しながら、とても分かり易く解説して下さいました。

店主はオルガン曲、とくにバッハのそれは好きですが、それでも聴いて楽しんでいるだけで、恥ずかしながらオルガン自体については大体の構造くらいしか知りませんでした。

そんなことは常識だよ、と言われるかもしれませんが、今回、とくにパイプについての説明はパイプオルガンの音の理解に役立ち、大きな収穫でした。
すなわち、パイプの種類には大別して、フルートパイプとリードパイプがあり、明確に音の質が異なること。
さらに一部には金属ではなく木製のパイプもあり、当然音色もそれぞれの材質を反映する、等々。

最後には、希望者が実際に鍵盤を触って音を出す体験会も用意され、多くの方が長い列を作っていました。

時々このオルガンを使用するコンサートが開かれるとのことですので、聴きに行ってみようと思います。
2017年10月14日
 


有難いことにお客様から立派な単行本をお譲り頂きました。
クラシック好きならきっと楽しめるとのことで、恩田陸の「蜜蜂と遠雷」。
ああ、それなら聞いたことある、という方も少なくないと思いますが、今年の直木賞と、さらに本屋大賞もダブル受賞した有名な小説だそうです。

架空の国内ピアノ・コンクールを舞台に、様々な生い立ち,立場の出場者それぞれ(メインでは4人)に過去から現在まで光を当てて描く青春群像小説で、著者自身(1964年生まれ)幼少のころからピアノを習い、今でもピアノを聴くのが大好きだそうで、実際の浜松国際ピアノコンクール(3年に一回の開催)に4回、一日中出場者のピアノを聴いて取材をしたとのことです。

読んでみるとよく分かるのですが、余程ピアノ・コンクールが好きか関係者でもない限りここまで詳しく描けないだろうというくらい生々しい描写で、さらにいずれもひと癖もふた癖もある登場人物が面白くて、思わずニヤッとしてしまいます。そのままアニメにもなりそうですが、小説では心の声の部分が多く、映画も含めて、そのままではなかなか映像化は難しそうです。

分厚い長編で、とにかく読むのの遅い私は始めの部分で少々難儀しましたが、途中からぐいぐい引き寄せられ、後半は止まらなくなるくらい勢いが付きました。
とくにピアノが好きな方、ピアノを習ったことのある方は自らを重ねて苦笑いをしながら楽しんで頂けると思います。機会がありましたら読んでみて下さい。

本日の、店主おススメ!
2017年09月12日
 

 
お客様の依頼により THORENS の'70年代初頭のプレーヤー TD125 の修理を行いました。

有名なTD124 と違ってシンプルなベルトドライヴ、3個のスプリング・サスペンションでプラッターとアームがフローティングされた構造です。
数十年ぶりに復活させようと出してきて電源を入れたところ、回転が安定しませんでした。
40年以上前の機械であることを考えるとパーツの劣化で半ば当然と言えます。

コンデンサーをはじめとして各劣化パーツを交換、速度微調整ヴォリュームと速度切り替えスイッチ接点のクリーニングを行い、内蔵のストロボ用ネオン管が切れているため、LED点灯式に改造しました。
外観も、長年汚れの積もった本体をクリーニング、木部をオイル仕上げすると、見違えるようにリフレッシュしました。

同時に旧マランツのやはり'70年代のプリアンプ Model 3300 とパワーアンプ Model 250 も一緒に修理して、かつての米独名選手たちによるチームの再結成です。
マランツではプリの Model 3300 が今聴いても意外なほど生き生きした音を聴かせてくれました。
2017年09月02日
 
この2,3日はTシャツ1枚では肌寒いくらいで残暑をどこかへ置き忘れたかのようです。
これは今来ている台風が秋を連れてきたからだそうで、その後はまた30度近くになるも、秋の気配は濃厚になるようです。

それにしても今年の夏は夏本番というのがほとんど無くて、梅雨の間のほうが真夏の暑さで、梅雨が明けてみたら途端に雨模様のはっきりしない天気、所謂戻り梅雨になってしまい、年に一度行くことにしている湘南海水浴にもとうとう行けずじまいでした。
暑いのは苦手なので(寒いのもですが..)、涼しいのはいいのですが、やっぱり真夏はちゃんと、カッと暑いほうがメリハリがあって良いかな。

今週は出張でお邪魔した先で、対照的なタイプのスピーカーシステムを聴かせて頂く機会がありました。

ひとつはフルレンジ・ユニットをオーダー製作のエンクロージュアに入れたシステムで、3種類を並べて聴けるようになっています。
最初に聴いたのは、ちょっと意外な選択で、元々カーオーディオ用に作られたアルパイン製の16cm。ダブルコーンや同軸2ウェイなどでなくシンプルなシングルコーンで、見た目はミッドウーファーに見えます。
チェンバロを聴かせて頂きましたが、音離れの良い軽快なサウンドで、オーナーのおっしゃるように上も下も欲張ってはいない、所謂ハイファイ調ではないものの、色彩感もあってとても気持ちよく聴くことが出来ました。

次がメインシステムのローサ―。
LOWTHER はかつてはラウザーと呼んでいたこともありましたが英国の20cm口径のフルレンジユニットで、白いダブルコーンがアイコン。'50年代から生産されています。
エンクロージュアはサイズ指定して製作したオリジナル。
ローサ―は元々はバックロードホーン式のエンクロージュアに入れる設計ですが、オーナーはバックロードホーンは好みでなく、敢えて密閉箱としてあります。
箱は先ほどのアルパインよりもふた回りほど大きく、ゆったりとした音が出そう。

期待どおり、スケール感も大きく、ずっと落ち着いた音で帯域感も必要十分。
同じチェンバロのレコードを聴かせて頂きましたが、臨場感や奥行きもよく出て、こちらは良い意味で十分にハイファイ調。流石は名ユニットです。

もうひとつは往年の名ユニット、三菱のP-610 ですが、いつの間にか時間も経っていたのでこれはまた次回のお楽しみ。オーナー氏によると渋めの優等生的な音とのこと。

数日後、神奈川県に足を延ばした際に聴かせて頂いたのは、対照的な大型3ウェイ。
しかも各ユニットが分離・独立して、ミッドとハイがホーンユニットという本格派。
通常こうしたホーンを主体としたオリジナル・システムは、能率などの問題でマルチアンプで鳴らすことが多いのですが、これはパッシヴ・クロスオーバーネットワークを使ってまとめているのには驚きました。
じつはこの方、元々大手オーディオメーカーのエンジニアで、アンプ設計もこなすヴェテラン。専用ソフトで特性のシミュレーションも出来るので、お手のものというわけ。
鳴らしているプリ&パワーアンプも半導体式のオリジナル設計です。
それにしても、ホーン臭さやうるささを感じさせず、まとまりが良い上に、しっかりホーンらしいスピード感もあって、とくにジャズは聞き惚れました。

同じ時期にこのようにたまたま全く対照的な構成のスピーカー・システムを聴いて、改めてオーディオの多様性を認識した次第。
どっちがより良いかとか、どっちが好きって問題じゃなく、うーん、どっちもやってみたいですね!
2017年07月17日
 


家内が「ブレーメン・フィルが杉並公会堂に来るけど、行く?」というので海外のローカルなオーケストラが好きな私は二つ返事で「行く行く」。
詳細を見ようとネットで調べたのですが、あれ? どこにも出てないなあ。
それもそのはず、ブレーメンの音楽隊のブレーメン、とばかり思っていたのが一文字違いの「ブルーメン・フィルハーモニー」、都内のアマチュア・オーケストラなのだそうです(ドイツにちゃんとブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団はあります)。
ブルーメンはドイツ語の「花」(Blume、Blumen は複数)。舞台上に美しい花を咲かせるような、新鮮で生気あふれる演奏がしたい、との思いからつけられた名前だそうです。

元々は指揮者・寺岡清高氏の提唱により'93年に1回限りのオケとして発足、同年9月の演奏会が好評を呼んで常設オーケストラとしてスタートしました。
アマチュア・オケといっても、その中でも一流を目指そうと、様々な演奏団体などに所属しながら経験を積んできたメンバーが中心となって、年2回の定期公演、特別演奏会などを開催して20年以上活動してきました。
指揮者も寺岡のほか今回の武藤英明、山田和樹、ゲルハルト・ボッセなどプロでも一流どころが名を連ねています。

今回指揮を執る武藤英明は、桐朋学園大学で斎藤秀雄に指揮を学んだ後、チェコのプラハへ渡り名匠ズデニェク・コシュラーに師事。チョコ・フィルをはじめとしてチェコの楽団との共演も多く、'90年にはプラハ放送交響楽団と「プラハの春」国際音楽祭にも参加しています。
今回のプログラムでもスメタナの「わが祖国」から2曲選ばれているのもそのためです。さらにプログラム終了後のアンコールとしてドヴォルザークのスラヴ舞曲2曲が演奏されましたから、チョコ音楽は彼の十八番であることは間違いないでしょう。

じつは店主はほとんどアマチュア・オケの演奏会に行ったことがありません。今までで2回位だったかと思います(新交響楽団だけは別です)。今回は歩いて行ける地元の杉並公会堂(ここは日本フィルの本拠でもあります)での公演だったからで、遠くであったら行っていなかったでしょう。
そんな特別に期待をして臨んだわけではなかったのですが、いざ始まってみるとなかなかどうして、流石によく練習しているだけあってうまいものです。プロと比べて大きく劣るということも無く、弦楽合奏などは聴いていた席(自由席)が良かったのもあるでしょうが、滑らかで美しいソノリティに聴き惚れました。
管楽器のソロに多少アマチュアらしさ(?)が垣間見られましたが、それはアマチュアとしては当たり前のレベル、一流を目指すというだけあって全体としては十分以上に楽しむことが出来ました。
これには武藤の指揮が貢献していることはもちろんで、スメタナは当然として、メインの「運命」がなかなかの力演、充実した演奏でした。彼の指揮で聴くのは初めてでしたが、冷静にちょっと涼しい顔をしながら、クライマックスではいつの間にかしっかり追い込んで盛り上がっているというところが印象的でした。

演奏会とは直接関係はありませんが、当日会場で配ってもらった多くの演奏会チラシを見て、在京のアマチュアオケはこんなにも沢山あるのかと、少々驚きました。
例えばこんな感じです:
日立フィルハーモニー(日立グループにはアマチュア・オケがこれを含めて二つあるそうです。さすが大企業),キルシュフィルハーモニー,ガリマティアス・ムジクム(ドヴォルザークの8番をやるのでそこそこの規模でしょう),エウテルペ楽奏団(ブラームスのハイドン変奏曲やモーツァルトの39番など),東京セラフィックオーケストラ(ベートーヴェン「田園」),ASSENBLED I ORCHESTRA(チャイコフスキー4番),伊達管弦楽団,アンサンブル・メゾン(シベリウスの5番など),オーケストラ・アンサンブル・フリーEAST(ブラームス3番),アフォアガート管弦楽団(ブラームス1番),オーケストラ・セレーナ(メンデルスゾーン「スコットランド」),ワグネル・ソサエティ・OB オーケストラ,オーケストラ・ディマンシェ(ショスタコーヴィッチ5番),エルムの鐘交響楽団(チャイコフスキー4番),渋谷交響楽団,アンサンブル・ジュピター(マーラー5番!),オーケストラ・フォルチェ(ベートーヴェン「英雄」),くにたち市民オーケストラ,オーケストラ・ウィル(ベートーヴェン第9),プロ―スト交響楽団(新世界,火の鳥)..。

当日もらったチラシにあったものだけでもこれだけですが、まだ山ほどあるのは知っています。
あなたはいくつ知っていますか?
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