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2014年1月
店主日誌:1
2014年01月19日


伊福部昭

池袋の東京芸術劇場に新交響楽団の第224回演奏会を聴きに行ってきました。
新響はアマチュア・オーケストラですが’56年に作曲家の芥川也寸志を音楽監督として創立、既に長い歴史をもつ名門です。
その技量はプロに比べても聞き劣りすることがないばかりか、ひとつの演奏会の練習を徹底して行なうため完成度の高さは特筆ものです。

芥川さんが亡くなってから足が遠のいていたのですが、今回は伊福部昭の記念演奏会ということで、本当に久しぶり(20年近く)にチケットを購入しました。
お目当ては敬愛する伊福部の作品ですが、この演奏会は凝ったプログラムで、彼の個展とはせずに他に弟子3人、芥川也寸志,黛敏郎,松村禎三の作品を並べて計4曲としたところがまた聴きどころです。

聴き馴染みのあるのは芥川の「エローラ交響曲」と伊福部の「ラウダ・コンチェルタータ」で、他の2曲は初めてです。
最初に演奏された黛の「ルンバ・ラプソディ」は彼がまだ学生の時、19才の作曲ということで若々しく才気溢れた曲。当時のモダニズムの影響は新鮮かつどこか懐かしさがあります。長らくお蔵入りで国内初演がつい4年ほど前だそうです。

次のエローラ交響曲は芥川がインドのエローラ石窟院を訪れた際に受けた圧倒的な印象を音にしたもので、湯浅卓雄の指揮のもと、強烈なエネルギーを感じることが出来ました。曲の本質を伝える優れた演奏でした。

松村の「ゲッセマネの夜に」は曲名は知っていたものの初めて聴いて、今までこの人にもっていた印象よりは分かり易いかなとも感じましが、4曲中ではやはり一番ゲンダイ・オンガク。夜をイメージ出来る音色の美しさが印象的でした。

そして真打ち、伊福部の代表作のひとつ「ラウダ・コンチェルタータ」(マリンバ協奏曲)は、かつて’79年、山田一雄指揮、新星日本交響楽団の初演を聴き、完全にノックアウトされた思い出の曲で、その時のマリンバ・ソロが今回と同じ安陪圭子でした。
その安陪さん、何と今年で御年77才!聴いている間はそうとは知らず、さすがに気力は少し衰えて60代くらいかな、と考えていたので、「いよっ!!」の掛け声とともに入ったフィナーレの連打での圧倒的な高揚には脱帽でした。
湯浅さんの指揮を聴くのは実は初めてでしたが、きりっと引き締まったリズムで大きなダイナミクスをもって聴かせるところは、とくに芥川と伊福部の曲で活きていて、大きな満足感を得ることが出来ました。

そしてまた嬉しいことに、最後にアンコールで取り上げられたのがファンなら大喜びの伊福部「交響ファンタジー第1番」、あのゴジラのテーマが冒頭に堂々演奏される名曲、観客からは割れんばかりの拍手が送られ、今でも変わらず高い人気を誇る伊福部作品の根源的エネルギーを久々に満喫させてもらいました。