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2017年3月
店主日誌:1
2017年03月04日
 
都内で開かれたレコードと録音技術に関する講演会に行ってきました。
予約して参加する、プライヴェートな催しです。

題して「こうして音は録音された」、お話して下さったのは元ソニーの技術広報室長で現在は芸大の非常勤講師を務める森芳久氏。
著作も多く、ソニー在籍中に書いた「カラヤンとデジタル」(写真)は評判を呼んで、退社後に芸大をはじめとするいくつかの大学で教鞭を執るきっかけともなりました。

長年の豊富な経験と実績に基づいたお話は湧き出る泉が如く、とても2時間の持ち時間では語り尽くせません。それも当然、大学の講座の1年分あるわけですから。こんな講義があったら毎回嬉々として聴講していたのになあ。

氏の経歴はレコードとオーディオの分野で多岐にわたり、かつとてもユニーク。
元々無線少年であったこともあって大学では工学を学び、その間にクラシック音楽に目覚めます。大のファンとなった当時のウィーンのソプラノ、リタ・シュトライヒに憧れて、卒業後は彼女の所属レーベル、日本グラモフォンに就職。
そこでレコードの音質改善に取り組むうち、カートリッジメーカーの品川無線(グレース)に誘われ転職。
カートリッジの開発に従事するうち、NHKの研究所にも出入りするようになり、そこで知り合った中島平太郎氏に誘われて、今度はSONYへ。

SONYでも当初カートリッジの開発を行いますが、時代はデジタルの夜明けに入り、単なる技術屋に留まらぬ広い見識を買われて、技術広報の責任者となります。
今度は一転してデジタルを広める先鋒として活躍しますが、その際デジタルのことを解り易くまとめたのが「カラヤンとデジタル」でした。

お話の内容は豊富過ぎてここにはとても書き切れませんので、ご興味のある方はこの本をお読み頂くとして、実技(!?)の方もたっぷり楽しませて頂きました。
持参されたのはエジソンの ろう管式蓄音機(第2号機)とポータブル蓄音機。
とくに、まずそうはお目にかかる機会のない ろう管蓄音機は、100年以上前とはとても思えない状態で、今なお精密な動作をすることに驚き、実際に音が出ると、その音が予想していたよりずっと音量があり、クリアなことに2度ビックリ。

あっという間に2時間を超えてしまっていましたが、まだやっとSPから33回転のLPとなったところまで。これからいよいよステレオLPの出現となるところで次回(あればのお話)を待て、となってしまいました。
森さん、是非「続・こうして音は録音された」をお願いします。