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2021年1月
店主日誌:1
2021年01月01日
 
 

皆様、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

昨年末の話ですが、恒例の2枚、クリスマスの「くるみ割り人形」と年末の「第9」、今回は上の2枚を聴きました。

くるみ割りは、アンタル・ドラティ指揮ロンドン交響楽団の全曲盤。元々は米MERCURY の名録音(1962年)のひとつですが、これは後年オランダPHILIPS からリリースされた2枚組の全曲盤です。
以前、英MERCURY のオリジナル盤でも聴きましたが、また違ったシャキッとした小気味良い音が魅力。
ドラティは後になってPHILIPS 時代にもアムステルダム・コンセルトヘボウ管とも全曲を録音していますが、そちらは落ち着いたスケールの大きさを感じさせるのに対して、ロンドン響盤はもっとストレートでリズムの切れの良さで聴かせます。
ドラティはディアギレフの有名なバレエ・リュス(モンテカルロ)の指揮者を10年間務めていますので、ここでも単なる管弦楽曲ではなく舞台の動きを彷彿とさせる指揮が流石です。
それにしても、くるみ割り人形は2枚分の全曲中、省けるところが見当たらず、全ての部分が素晴らしい音楽の連続で全く飽きさせません。
それを知ると有名な組曲版ではつまらなく聴こえてしまいます。全曲は長くて聴くのが大変、と思っている方も是非一度じっくりお聴きになって下さい。長いと言ってもLP2枚分ですので、大したことはありません。

昔、指揮者の尾高忠明氏が「チャイコフスキーの交響曲は少々ジンタ調であまり好きになれないが、彼のバレエ音楽は素晴らしい。」と言っていました。数十年年を重ねて今、チャイコフスキーの交響曲は彼のもっとも重要なレパートリーのひとつになっていますが。

さてもう一曲、年末の第9。今回はオーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団です。
聴いたことのある方はあまりいないのではと思いますが、実は店主にとっては初めて購入した第9のレコードで、子供の頃から数えきれないほど聴いてきた録音。思い入れの強い演奏です。
ただ、当時買ったのは1枚もの(1,800円で少し安かった)で、聴いていた機器も安い電蓄のようなシステム。詰め込みカッティングで肝心のフィナーレで音が歪んで迫力も足りず、演奏は良いはずと思いながら満足してはいませんでした。

だいぶ後になって入手したのがこの米国COLUMBIA のベートーヴェン交響曲全集で、1961~66年録音の7枚組セット。
一部、3,5,6,8,9番は単発で出ましたが、それ以外はこの全集にしか収録されておらず、事実上このセットがオリジナルと言ってよいでしょう(COLUMBIA 2-eye グレー・レーベル盤)。
嬉しいのが、ここでは第9が1枚半、3面に渡って収録されている点。発売当初のオリジナルであるのと、このゆったりカッティングのお陰でずっと良好な音質で聴けるはず、との期待は見事的中! まさに目から鱗、初めて本来の演奏を堪能することが出来たのでした。
原点回帰と言われる今風の快速調とは異なり(50年以上前ですから当然ですが)、インテンポの安定感あるじっくりした歩みで、バランスが良く、オーマンディが優れたヴァイオリニストであったのを反映して、と言われる通り弦楽器をベースにした厚みのある音色は明るめで、ベートーヴェンのアポロ的な面が映えます。
肝心のフィナーレもこの盤では歪もリミッター感も皆無で、十分なダイナミックレンジで白熱の力演であることが分かります。
アメリカのビッグファイブに入るのはもちろん、中でも屈指のビルトゥオーゾ・オーケストラに育て上げたのは、ストコフスキーとこのオーマンディであったのは、伊達ではありません。
改めて他の8曲もじっくり聴き直してみたいと思います。