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2016年4月
店主日誌:1
2016年04月03日
 
 
 
山田和樹指揮の日本フィルを渋谷のオーチャードホールで聴いてきました。
実はこのチケット、元々は弟が購入(彼は大の山田和樹ファン)、楽しみにしていたコンサートだったのですが、急用が入り泣く泣く断念、棚ぼたで譲り受けたものです。

現在このコンビはマーラー・ツィクルスを進行中で、これは去年から番号順に年3曲ずつ、計3年かけて全9曲を演奏する長期プロジェクトです。彼の初めてのマーラー・ツィクルスですから、自分の成長とともに進めていきたいという思いがあってだそうです。
今年は2年目ですから4,5,6番を、1~3月に月1曲のペースで演奏会が開かれました。
私が聴いたのは今年の最後、交響曲第6番で「悲劇的」の通称で呼ばれる曲。マーラーの交響曲としては声楽も入らず、4楽章構成であるところも、束の間の古典回帰とも見ることが出来ますが、絶望から勝利を勝ち取るといったベートーヴェン以来の交響曲の伝統とは正反対で、闘争から最後は打ちのめされて破局を迎える夢も希望もない構成(しかも終楽章だけで30分近くかかる!)、カウベル(牧場で牛の首に着ける大きなベル)や巨大ハンマー(これで主人公はノックアウトされる)などが加わる楽器構成などは、やはりマーラー以外の何物でもありません。

山田のコンサートでもう一つ楽しみなのが、恒例となっている演奏前のプレトーク。
指揮者自身が曲の解説を分かり易く、自分たちのエピソードなども交えて40分以上かけて話してくれますので(今回は興が乗って時間超過、途中裏方から「巻き」が入りました)、たまにしかコンサートに行かず、楽曲解説を見る機会も少ない身にとっては有難いところです。

さて演奏はというと、大変充実した素晴らしいものでした。
さすがは若手のなかでも今最も注目されるひとりである山田の面目躍如というところで、とくに後半3,4楽章は申し分なく、演奏する彼らも満足のいく出来であったでしょう。
日フィルは曲の始め、1楽章では弦が今ひとつ集中度を欠き、響きが薄い印象でしたが、次第に指揮に熱が入ってくるとオケにも全体的にガッツが出てきて響きに厚みが増し、聴き応えがするようになりました。
全曲を通して金管、なかでもトランペットの外人さん(オッタビアーノ・クリストーフォリ、客演首席)とトロンボーンの主席は実に気持ち良くバリバリ鳴らしてくれて、こうでないとマーラーは気持ち良く聴けません。

そうそう、例の巨大ハンマー(写真2)は最近の通例どおり2回のお出ましでしたが、ズッドーンといい一撃(二撃?)をかましてくれ、気持ち良く打ちのめされることが出来ました。

沢山のマイクがセッティングされて、恐らくツィクルス全体をライヴで録った全曲録音がいずれ発売されるのでしょう。CDになって、どんな音で聴けるかも楽しみです。