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2020年12月
店主日誌:1
2020年12月02日
 

原田慶太楼

本当に久しぶり、フルオーケストラ・コンサートを聴きに行きました。
コロナ禍になってからは海外からの指揮者はほとんど来日出来なくなって、軒並み予定していたコンサートが中止、手元にあったチケットも一体何枚キャンセルになったことでしょう。

サントリーホールで聴くのも久し振り、期待が高まります。
来られなくなった外国人指揮者に代わって、このところ振り始めているのは日本人指揮者。ヴェテラン有名指揮者はもちろんですが、図らずも売り出し中の若手の出演の機会が増えたことは良いことでしょう。
ただ同じお金を出して聴くなら、素晴らしい演奏を聴かせてくれることの分かっているお気に入りの大物指揮者を聴きたいのが本音で、いつもなら聴いたことのない新人の公演にはほとんど行くことがありません。
今回の指揮者、原田慶太楼も聴いたことはなく、実は名前もほとんど知りませんでした。
ただ若手といっても(35才)すでに十分な実績のある人で、音楽の勉強は米国で受け、フレデリック・フェネルを始め、マイケル・ティルソン・トーマス,オリバー・ナッセン,ヘルベルト・ブロムシュテットらに師事、アメリカの数多くの音楽賞を受賞しています。
メーコン交響楽団,ツーソン交響楽団,アリゾナ・フィルハーモニー管弦楽団,リッチモンド交響楽団のアシスタント,アソシエイト・コンダクターを経て、2015年にシンシナティ交響楽団のアソシエイト・コンダクター,2017年にはサヴァンナ・フィルハーモニックの音楽監督に就任。地方オケではありますが、まさに大活躍と言えるでしょう。さらに2017年からはいよいよ東京交響楽団の正指揮者に就任予定だそうです。

こうした経歴から今回のアメリカ大陸の音楽に的を絞ったプログラムは彼の一番得意とするところと思われ、初めて聴くには最適。

[プログラム]
バーンスタイン/オン・ザ・タウン
G.ウォーカー/弦楽のための抒情詩
ピアソラ/ブエノスアイレス変奏曲
コープランド/アパラチアの春
A.マルケス/ダンソン第2番

かなり凝った選曲は彼の地で鍛えられた彼ならでは。
バーンスタインは有名なウェストサイド物語ではないし、コープランドもロデオやビリー・ザ・キッドではありません。
ジョージ・ウォーカー(アフリカ系アメリカ人として初めて音楽院の教授職に就くなどクラシック音楽界での黒人の地位向上に貢献)以外は全てリズムが主体のノリのいい音楽なので、原田は度々ダンスするようなジェスチャーでオーケストラを引っ張ります。
キレのよく自信に満ちた指揮はアメリカでの評判の良さをうかがわせるエンターテインメント性に溢れ、確かに今回のプログラムは最も原田らしさを感じさせるものだったでしょう。

最後のアルトゥーロ・マルケス(1950-、キューバ)の人気曲ダンソン第2番では体全体を使った激しい指揮(ダンス?)で表現、終わった頃にはシャツの裾が全てズボンから出てしまい、苦笑い。
ちょっと日本人離れした国際派として、期待の若手であるのは間違いがないようです。