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2020年6月
店主日誌:2
2020年06月21日
 
 
 
杉並公会堂を拠点とする日本フィルと、杉並公会堂&杉並区が共同で企画した「コロナ収束を願うコンサート」を聴きに行きました。

この特別企画は6月18日と19日、各日100名(ホール客席は1,190 席)で開催、区民公募(抽選)により行われました(無料)。
写真のようにシートに番号が貼られた指定席で、何人も空けて座るようになっています。
後ろの方だった私の席の列では他に座る人が無いくらいに空けてありました。いつものコンサートでは隣の人に腕がぶつからないように気にしながら座っていますが、今回は楽々、いつもこれくらいだと楽だなあ、などと思いましたがこれでも満席です。

午後2時から1時間強、正味50分ほどの公演で、日フィルの弦楽器メンバー4人によるカルテットが、だれもが楽しめるようにクラシックばかりでなく懐メロ(「憧れのハワイ航路」)や映画音楽(「80日間世界一周」),スウィングジャズ(「A列車で行こう」)など親しみのあるメロディばかりが続いて飽きることなく楽しむことが出来ました。
途中、第1ヴァイオリンの方が、曲についてだけでなくこれまでの苦労や日フィルの現状についてコメントしながらの演奏でした。

日本フィルはこれに先駆けて10日にサントリーホールで無観客によるライヴ配信コンサートを敢行していて、この模様は昨日(21日)にNHK で放送されていましたが、観客がいないため拍手などリアクションも無くしーんとして、どうしても違和感は免れません。奏者の方が「寂しいなあ、疲れた…。」と漏らしていたそうですが、今回のコンサートでは聴衆が居るのでちゃんと拍手も起こり、演奏会の確かな手応えがありました。

先日、楽団理事長の平井俊邦氏(元銀行マンで、企業再建に手腕を発揮してきた方です)が日経の取材に応じて日フィルの窮状を訴えていましたが、年間の半数ほどのコンサートを中止せざるを得ず、そのため年4億円の赤字になり債務超過に陥ると予想しているとのこと。自治体の予算や支援母体に頼らない自主運営の公益財団法人であるため、今までに無い存続の危機に陥っているのです。
 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59570400W0A520C2BC8000/
 
https://www.japanphil.or.jp/orchestra/news/24224
 

杉並公会堂玄関前のシンボル 
2020年06月01日
 

BAYZ Audio Courante

お客様の希望で、BAYZ Audio ベイズオーディオという新しいメーカーのスピーカー Courante クーラントをご自宅に持ち込んで試聴して頂きました。

写真をご覧頂くと分かるように、ほとんど類を見ない独創的な外観にまず目を奪われます。ちょうど鎖の輪のひとつのような、太いパイプを長方形状に繋いだように見える(実際そうなのですが)造形は、現代彫刻として美術館に展示してあっても違和感がないほどです。

恐らくこの形状と細部を見て、「なるほどいい音がしそうだ」と直感する方と、「こんな変わった形でまともな音はしないだろう」と考える方とに見方は大きく分かれるだろうと思います。ちょうどかつてのB&W オリジナル・ノーチラスのように。
このお客様はもちろん前者で、ひと目で自分の今求めている音の出方を実現してくれる可能性を直感されました。

私自身もこのスピーカーは昨年の東京インターナショナルオーディオショウで是非聴いてみたい筆頭だったのですが、デモの時間帯が合わず聴けずじまいでした(ステラ/ゼファン・ブース)。
話題になりましたから、この時実際にお聴きになった方もおられるでしょう。
そんなこともあって今回この機会に聴くのを楽しみにしていました。

実はこのスピーカー、形状と同じくらい驚く点がもうひとつあります。
重量です。
高さが約1.4m、奥行き40cmあるにもかかわらず、13kg しかないのです(分離出来る台座を除く)。はるかに小さな当店リファレンスの小型ブックシェルフ・スピーカー、パラダイムのPersona B が14kgですから、これよりも軽いことになります。
これは本体の材質に秘密があります。F1カーのモノコックボディや競技用飛行機に使用される、特許のコンポジット材(PMC)で出来ているからです。
設計者のゾルタン・ベイ氏は通常の常識とは正反対に、超軽量なキャビネットを目指しました。
とにかくこのスピーカーは技術的な特徴が盛り沢山で、ここではご紹介しきれませんので、ご興味のある方はこちらをご覧下さい↓
https://www.zephyrn.com//bayzaudio/page/courante.html

大きなスピーカーであるにもかかわらず出張デモがスムーズに行えたのは、この軽さのお陰でした。
高さはあるものの幅は19cmと、トールボーイ・スピーカーほどの専有面積しか必要としないので設置も楽、後々のセッティング調整も簡単です。

さて実際に鳴らした結果は、まずは置けるところに「ポン置き」だったにもかかわらず、お客様のリスニングスペースが十分大きかったのも奏功して、始めから充実のサウンドを披露。
全方位スピーカーというと、どうしても少し特殊な鳴り方、音が拡がってスピーカー自体から音が出ているという感覚から解放されるものの、音像が捉えにくかったり、音場の緻密さに欠けるなど、トレードオフの点もあるように感じていました。

しかしクーラントは全方位型として期待する音場の拡がりが素晴らしいのはもちろん、かつ、通常のスピーカーのような音像定位の気持ち良さも兼ね備えているので、いつものスピーカーで聴くのと同じように楽しむことが出来るのです。能率の良さもあるのでしょう、音が細くならずリスニングポイントに届いてくるので実体感もあります。
しかしやはり、2つのスピーカーの外側を大きく超えて部屋の前方一杯に拡がるステレオイメージは何といってもこのスピーカーだけのもの。

ジャズ・トリオをバックにしたヴォーカルを聴きましたが、これはまさに部屋の一角に彼らを招いて演奏してもらっているよう。通常の優れたスピーカーはピンポイントでヴォーカルが浮かびますが、浮かび上がるのは「口」(くち)。クーラントではほぼ等身大の歌い手のボディそのものが「見える」のです。
また、カラヤン一世一代のスペクタクル、ヴェルディの「アイーダ」(ウィーン・フィルとの新録音)では、ほとんど天井知らずのダイナミックレンジと広大なステージを提示、もう脱帽!
そのまま即決で導入頂きました。誠にありがとうございます。

特別なスピーカーではありますが、多くの方に聴いて頂きたい製品です。