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2023年11月30日
 

 

 
『トランヴェール』誌といっても分かる人はまずいないと思いますが、新幹線に乗ると前の座席の背に挟んである小冊子です。確かにそうした冊子があるのは何となく覚えていましたが、ページ数は少ないもののJR東日本の発行する月刊誌だそうです。
逆に言えば、新幹線に乗らないと読めない特別な雑誌とも言えるかな?

表紙には「旅を深く、旅を楽しく。トランヴェール Train vert」とあり、特集で各地の話題を中心に、東京の駅シリーズや名産品,温泉などのコラムが載っています。

少し前に取材をしたいとの連絡があり、それがこのトランヴェールでした。
コラムのひとつにある「東京スキマ Trip」という記事で今回Vol.35 は荻窪駅特集ということでテーマを「音楽あふれる、荻窪」としたのが縁で、音楽を奏でるオーディオを扱う店として採り上げて頂いたわけです。
といっても、他に大田黒公園(音楽評論の草分け、大田黒元雄氏の元邸宅)と名曲喫茶ミニヨン(1961年創業の老舗)と一緒に1ページの中での紹介ですので、写真と数行の文章です。

新幹線に乗らないと見られないので、まず見てくれる人はいないだろうなあ、と思っていたら、すぐにお一人から「見たよ」と連絡が来たのが嬉しかったです。

そういえば、数日前の「じゅん散歩」(テレビ朝日)でも、わが街荻窪が採り上げられていました。
2023年10月15日



11月初めの4日間、地元荻窪恒例の「荻窪音楽祭」が開催されます。
年一回開催のこの音楽祭、今年は36回目となります。

地域のあらゆるところで様々な規模のコンサートが行われるのが特徴で、杉並公会堂・大小ホールはもちろん、区民センター,郷土資料館,教会(4ヶ所),レストラン,カフェ・喫茶店,銀行のロビー,スタジオ&ライヴスペース,駅前広場,駅ビル屋上,スポーツセンターなどなど、全部で45公演程のコンサートが開かれます。
ジャンルはクラシックに類するものに限られますが、奏者は一流のプロからアマチュア,子供参加の体験型まで様々。誰でも企画して音楽祭に参加することが出来ます。

運営するのは「クラシック音楽を楽しむ街・荻窪」の会、有志による自主運営で、多くのボランティアによって支えられています。
お近くの方、よろしければ足をお運び下さい。

「第36回 荻窪音楽祭」
11月2日(木),3日(金),4日(土),5日(日)
https://www.ongakusai.com/index.html

全公演とその会場の地図が載ったコンサート・ガイドが店頭にありますので、お気軽にお持ち下さい。


荻窪音楽祭コンサート・ガイド
2023年07月31日
 


季刊誌『Audio Accessory』(音元出版)の記事のための取材をして頂きました。
人気のスピーカー、パラダイム社Persona を採り上げたシリーズ企画の、今回はこのスピーカーを推す全国のショップを紹介する記事です。

でもこの話を伺って、さて、これはちょっと困った…。
最近お越し下さったお客様はよくお分かりと思いますが、狭い店舗にレコードやら商品やら中古品やら部品(?)やら、とにかく溢れかえって文字通り足の踏み場も無い状態で、これではそのまま店のカットを紙面に載せるわけにはいきません。

そこで一念発起、いつか片付けようとしていた店内の整理整頓をすることに。こんな機会でもないといつになるか分かりません。約2週間ほどかけ、手の空いた時間を利用して重たい機材や大量のレコードを移動して、埋まっていたスペースを取り戻しました。掃除もしてスッキリ。
試聴機を並べたラックも下まで見えるようになりましたし、ほとんど一人しか腰掛けられなかったお客様用チェアも4人分くらいは置けるようになりました。
今日、中を覗いた当店顧問(うちのカミさん)からも「やれば出来るじゃないか。」とのお言葉を頂きました(笑)

記事はオーディオアクセサリー誌の次号に載る予定ですので、機会がありましたら見てやって下さい。
改めてご来店もお待ちしております。
2022年12月17日
 

 
上杉研究所の300B 真空管パワーアンプを納品させて頂きました。

写真は、納品前にチェックとお客様へのご説明のために店頭で通電しているところです。
今回、真空管はお客様手持ちの米Western Electric 製 WE300B(前回、1990年代再生産分)を使用、この球をウエスギに送ってメーカーでの調整を行いました。

お買い上げ誠にありがとうございました。
2022年10月10日
 


人気のスピーカー Persona B を納品させて頂きました。

今回はスタイリッシュな「カーボンブラック」。キャビネット,メタルバッフル,グリルネットすべてブラックで、唯一グリルネット周辺にシルバーのアクセントが入るシックな仕上げです。

今までお使いの B&W の805 D3 との入れ替えでのご導入で、MARANTZ のSACD/CD プレーヤーとインテグレーテッドアンプで鳴らしておられます。
両者の大きさと全体の形状はよく似ていて、底面のサイズ,形状もほとんど同じでしたので、そのまま805 D3 の専用スタンドに載せて聴いてみました。スピーカーケーブルも805 D3 同様、バイワイヤー結線です。

入れ替える前にまず805 D3 で聴きましたが、目の覚めるようなハイハットや締まってハイスピードなドラムスなど、流石に高級ブックシェルフ・スピーカーの代表格、誰が聴いても納得の鳴りっぷりです。
うーん、バーンインもこれからのまっさらなPersona B にとってはちょっと相手が悪いかなとも思いましたが、音が出た瞬間、想像以上に鳴り方が違うのが分かりました。

まず、能率が良いからでしょうか、前に出てきて全体にスケールアップ。
805 D3 はハイハットはシャッキリ、ドラムはドスッと実に分かり易く、聴きどころを抽出して聴かせるのに対し、Persona B はすべてを漏れなく聴かせるといった印象で、周波数帯域がフラットであるという単純な問題ではなく、すべての密度が均一に高く、しかもちっとも押しつけがましかったり、うるさかったりしないのです。
まあ、この印象は、聴いているうちにいつも店でPersona B を聴いているのと重なってきているのは確かですが、お客様の聴き始めてすぐの第一声、「今まで聞こえなかったところが色々、あらゆる方向から聴こえてくる!」がほぼ同じことを言い表しているようです。

ところで、当初お引き取りする予定だったB&W 805 D3 はお孫さんが欲しいとのことで、そちらに行くことになったそうです。

お買い上げ誠にありがとうございました。
2022年09月28日
 






Technics SP-10R ダイレクトドライブ・ターンテーブル専用に SAEC が開発したターンテーブルデッキ SBX-10R にリニアトラッキングアームの Clearaudio TT3 を載せるというエキサイティングなシステムをご用命頂きました。この組み合わせは恐らく世界初ではないかと思います(調べてはいません、念のため)。写真は店で事前の仮組みをしているところ。
鈍く光るオールシルバーの外観はメカニカルな印象を一層引き立て、高精度な測定器のようにも見えます。

かつて1970年代にSAEC にはTechnics やDENON のフォノモーター用にSBX-3 というターンテーブルデッキがありました。SBX-10R は完全な新設計で、現在の加工技術をもって製作されます。なんとオールステンレス製、36kgの重量があり、運ぶのも一苦労です(実際はこれにさらに18kg のSP-10R とTT3 が載ります)。
アームベースをTT3 用に専用加工してもらったこともあり、仕上がってくるまで半年ほどかかりました!

二人がかりで何とかラック最上段に載せ、アームの調整。カートリッジは既にお使いのDA Audio DS-W2 を装着。現在、DS-W3 をバックオーダー中です。

この度もご用命誠にありがとうございました。

2022年06月01日
 

 

 
私どもの店頭リファレンス・スピーカーでもあるParadigm パラダイム社のPersona B を納品させて頂きました。

かねてから気になっていたというこのスピーカーをご自身のCDでじっくり試聴頂いて、結果、目指すものに最も近いとご判断頂いての導入となりました。
外観色は店のデモ機と同じアリアブルー・メタリック。これはペルソナ・シリーズの顔とも言えるカラーとなっています。

店から自転車で伺える距離にあるご自宅に伺うと、きちんと整理された居間にこれまた実に整然と設置されたオーディオ・システムは大変すっきりとして見えますが、3列に並んだラックには既に空きスペースが無いほど多くの機材が収められています。
使われていない機器など無く、使い易さも両立されていて、ケーブルも無駄無く機能的に整理が行き届き、これは音質的にも重要です。

自己流でやっているのでと謙遜されていますが、これは多くの試行錯誤を重ねた末に辿り着いた結果に違いありません。
一般に評価の高い、或いは人気の高いモデルなどという基準ではなく、ご自身の目標をしっかりと見極め、ご自身の審美眼を信じて、確実に目標に収斂していく。それには長い時間がかかっているはずですが、見事に結果となって表れています。
お客様宅でノルウェー HEGEL(ヘーゲル)のアンプを拝見することは稀ですが、そのプリとパワーアンプを核にシステムを構築、今回のPersona B との組み合わせはまだ鳴らし始めで本領発揮には程遠いはずですが、既にはっきりと相性の良さと、恐らく目指されている音の片鱗が聴こえ始めていると感じました。

お聴きになるのはジャズがメインですが(CD,レコード,ハイレゾ)、その中心となるECM レーベルの優れた音源を、スピーカーの後方、左右いっぱいに窓を通して広がる木々の緑を背景に聴いていると(隣は地域でも有名な公園です)、これはもうただオーディオを聴いているというのを超えて、格別の世界です…。

これからバーンインをしながら細部を詰めて頂くことになります。
この度は誠にありがとうございました。
2022年04月16日
 

JBL 4309

小型サイズのJBL モニタースピーカー4309 を納品させて頂きました。
写真を見ただけでは分かりづらいですが、幅24cm,高さ42cmほど、大型スタジオモニターをそのままスケールダウンした外観ですが、中身は本物。
本格的新型ホーン・トゥイーターと6.5インチ・ピュアパルプコーン・ウーファーによる2ウェイ・スピーカーです。

早速EAR の真空管インテグレーテッドアンプV12 に繋いでレコードを聴くと、まだ下ろしたてにもかかわらず、これぞJBL サウンド!
とくに低域の充実感は完全にサイズを超え、EAR が躍動感を引き出しています。
贅沢な組み合わせですが、ノリの良さ抜群。


EAR V12

次に試しに、普段は他のスピーカーを鳴らしているアンプ、YPSILON イプシロンのインテグレーテッドアンプ Phaethon フェートンを繋いで鳴らしてみました。
このアンプは同社の最新アンプで、最近導入されてようやくバーンインが済んだ頃なので、それを確認させて頂く目的もありました。
これはもう至ってまっとう、正統派サウンド。
しっかりJBL ではありますが、ヴォーカルの口元は本来のサイズ,広い音場,ジャズもクラシックも選り好み無し。アンプの実力から言って当然ではありますが。

因みにパワーアンプを含めて、すべての機器の電源を足元から支えているのは、巨大バッテリー電源のドイツSTRONTANK ストロムタンクのS2500 Quantum。
これを導入してから電源関係に全く余計な心配が無くなり、システム全体が大きなブレークスルーを果たしたことで、とくに安心してパワーアンプに注力出来るようになったとのことです。
まさに理想的なシステム構成と言えるでしょう。


YPSILON Phaethon
STROMTANK S2500 Quantum
2022年03月09日
 

 

 
ウィーン・アコースティクスのスピーカー、Beethoven Concert Grand Reference をご納品させて頂きました。
 
同社の中では特別なモデルを除くと最上級の大型トールボーイ・モデルです。
と言ってもバッフル面の幅は18cmウーファーぎりぎりに切り詰められた205mmしかありませんので、高さが1m13cmあるものの威圧感は全くなく、優しいチェリー色の選択で、部屋の明るい木の感触を活かした内装にも予想以上にマッチしていました。
 
同時に導入頂いたアンプはトライオードのプレミアムモデル Musashi
実は当初、ひと回り小さなBeethoven Baby Grand Reference をトライオードのTRZ-300W で鳴らして試聴頂いたのですが、ビロードのような中高域の美音を絶賛頂いた半面、フルオーケストラを聴いたときの低域が下がり切らず、少々腰高に聴こえたのが気になりました。
 
部屋がかなり広いうえにスピーカーの上の天井高が高く、聴取位置までの距離もあるため、Baby Grand には少し荷が重かったようです。
そこでウーファー口径がひと回り大きく、しかもウーファーの個数もひとつ多い3本、キャビネットの容量も十分に大きい上級機 Beethoven Concert Grand Reference を選択、アンプは低域も豊かに響くように駆動力では申し分ないMusashi にパワーアップしました。
 

TRIODE "Musashi"
 
目論みは見事に当たり、ほぼ想定通りの結果に。
スケールが格段に向上、中低域の量感も遥かに豊かに響くようになりました。
Baby Grand で体験したビロードのような弦は今のところ僅かに及びませんが、これはConcert Grand がまだ全くエージングが進んでいないことが関係していると思われ、今後気にならなくなるはずです。
それ以外はあらゆる点でBaby Grand を上回る結果となり、コストアップとはなったものの十二分にご満足頂ける内容となりました。
 
この度は誠にありがとうございました。
次はレコードを聴けるよう整備することが課題となります。
2021年09月08日
 


リトアニアの先進的ターンテーブル、Reed 1C と同じくReed 1H トーンアーム、MCカートリッジのMy Sonic Eminent GL を納品・セッティングにお客様宅に伺いました。

このお客様は長年のお得意様で、この度ご自宅をリフォームされ、この部屋も以前は畳敷きの和室であったものを一新、自然木の質感を生かした内装がお納めしたReed 1C とすでにお使いのスピーカー AUDEL Maika Mk2 の樺材木目仕上げとうまくマッチして、まるでカフェにいるような実に居心地の良い空間となっています。



ジャズ・ヴォーカル,ハイフェッツのヴァイオリン,マイルス・デイヴィスのトランペット等々、生々しさが半端なく、思わず身を乗り出してしまいました。
この部屋で聴くと次から次へとレコードをかけてしまい、ステイホームでお仕事の合間にちょっと息抜き、というわけにはいかないかもしれませんね。

この度は誠にありがとうございました。
2021年06月19日
 

CEC DA3EX
 
先日お納めした CEC の新しいD/Aコンバーター、DA3EX を聴かせて頂きにお客様のところに伺いました。

先月発表されたばかりで、派手な宣伝も一切しないのでほとんど知られていませんが、搭載するCEC 独自のSuper Link 機能を使った同社のCDトランスポートとの接続ではジッターを極限まで抑えることが可能となります。

このお客様は既にCEC の最上級CDトランスポートTL3.0 をお使いなので、今回のDA3EX の導入で初めて本来の能力をフルに発揮することが出来るわけです。


CEC TL3.0

早速、今迄お使いのD/Aコンバーターの聴き比べをさせて頂きました。
3種類のDACをスイッチで瞬時に切り替えられるようになっています(アキュフェーズだけは搭載ドライヴ)。

まずアキュフェーズSACD/CD プレーヤーDP-720 に搭載のDACは予想通りの滑らかな美音で、期待を裏切らない安定した再生は流石です。

次は今までお使いの47研のDAC、Model 4705+強化電源 Model 4799。
これはストレートで見通しがよく、ありのままを提示するリアリティを感じます。歌手や楽器の実在感も特筆もの。

そして今回のCEC DA3EX は、最新モデルということもあるのでしょう、実に自然でどこにも気負いがなく、誇張のようなものを感じさせません。空間表現も抜きんでているのを感じます。
やはりSuper Link も一役買っているのでしょう。
このCEC DA3EX は価格もこなれていて、とくにCEC のCDトランスポートをお持ちの方にはおススメ、最新CDプレーヤーを購入したのと同じ効果があります。
 
CEC DA3EX 220,000円(税別)
 
それにしてもこうした微妙な差を的確に描き分けて聴かせてくれるスピーカー、ベイズ・オーディオ(Bayz audio)のクーラント2.0 は、いつ聴いてもその再現力の高さにほとほと感心、聞き惚れてしまいます…。

貴重なお時間、ありがとうございました。
 

Bayz audio Courante2.0(右)
2021年06月12日
 

JJ 300B

当店の試聴機であるトライオード TRZ-300W(インテグレーテッドアンプ)は出力管の300B を片チャンネルで2本パラレル駆動させて、A級シングル動作で20W/ch の出力を発揮します。

導入したのは標準モデルですので、付属する300B はトライオードの銘の入った純正球です。
いつもはこれで聴いていて、十分その300B らしい芳醇な響きに満足していますが、上級仕様には現在数ある300B 球のなかでも傑作との評判のPSVANE WE300B を搭載したモデルがあります。この球に付け替えた音を試してみたいと思い立ち、トライオードさんからPSVANE をお借りしました。

このアンプは球を換える時のバイアス調整が簡単に出来るので交換は簡単です。
さて、結果は?
ぱあーっと視界が開け、色彩が鮮やかになったような印象で、より300B の特徴がはっきり活かされています。響きが豊かになったと言ってもよいでしょう。
一方、オリジナルのトライオード300B もよく聴けばバランスの点では悪くなく、レコードによってはPSVANE で隈取りがきつくなる場面でも聴き易いのは有り難いところ。
でもPSVANE を聴いてしまうとやはり戻れなくなってしまう??

さてもう1種類手元にあったスロヴァキアJJ 社製300B もついでに試してみました(写真)。
これはちょうどトライオードとPSVANE の間くらい、トライオードに比べると響きが増しますが、PSVANE ほどではない。
三者三様、いえ三球三様。真空管アンプは困りますね、カートリッジを交換するように、一度試すとどれも皆付け替えて試したくなる。
これくらいにしとこう、っと…。
2021年04月14日
 

EAR Acute Classic

先日、英国EAR 社のCDプレーヤー、Acute Classic が生産休止になっていると聞いて理由を尋ねたのですが、よくあるCDドライヴメカの入手難ではなく、基幹部品であるⅮ/AコンバーターICの供給不足が原因とのこと。

半導体製造メーカー大手、旭化成エレクトロニクス(AKM)の昨年10月の火災による一時操業停止と、さらにそれに追い打ちをかけるかのように今年3月、同じく半導体大手のルネサスエレクトロニクスもまた火災で被害を受け生産停止、回復には1ヶ月ほどかかるといいます。

このダブルパンチでICチップは一気に供給難に陥り、まず主たる納品先である自動車メーカーへの供給が先決、オーディオ用途など微々たるものですから、後のまた後回しということでしょう。
マランツからも同様の理由でDACチップ変更の知らせがありました。

それにしても大手半導体メーカーの工場が相次いで2ヵ所、同じく火災で操業停止に陥るとは陰謀論者でなくてもどこかの国の工作ではないか、などと勘繰りたくなるのも無理からぬところ。
困っているところへ中国製チップ供給の打診があったとか…。

コロナ禍に加え、当分はDAC禍でオーディオ界は受難続きとなりそうです。
その点、高度なICチップなどを必要としないアナログは、ここでもしぶとく生き残るでしょう。
2021年02月03日
 


あっという間に2月になりましたが、今年ほど正月らしさ無く過ぎてしまった新年は無かったのでは?
4日が月曜日という曜日の巡りあわせの悪さもありますが、大きな原因は今だその渦中にあるコロナ禍。
出掛けたり、集まったり、食べたり、観に行ったりというお正月ならではの行事がことごとく制限されたことで華やいだ正月気分がどこかへ行ってしまいました…。

もちろん音楽も例外ではなく、毎年出稼ぎ(?)に来るヨーロッパのいくつものウィンナ・ワルツ楽団が来ないので、ニューイヤー・コンサートが皆無に。

毎年この日誌にも書いていますが、新年にプライヴェート・ニューイヤーコンサートとして必ずレコードを1枚聴いています。これは密にもなりませんので例年通り決行。
今年はジョージ・セル指揮するクリーヴランド管弦楽団のアルバム「美しく青きドナウ/ヨハン・シュトラウス・フェスティバル」(米Columbia/Odyssey)を聴きました。

セルらしく実にはっきりくっきり、元気が良くて力をもらえる音楽。
冒頭の「青きドナウ」も、入りのトレモロからしてはっきりくっきり、このレコードのジャケット写真のようにドナウの流れを遠くから俯瞰するというのではなく、川岸で見ているか、遊覧船で流れの中にいるかのよう。
ワルツ部分では優雅よりは堂々としていて、まるで軍人さんが颯爽と踊っているようです。と言っても決して一本調子なわけではなくて、そこは知性派のセル、ニュアンスも豊かです。

2曲目の「ピチカート・ポルカ」は冒頭からそのピチカート音の大きさにビックリ。
しかも大勢で弾いているはずなのに全く乱れが無いので、まるで1人ででっかい楽器を弾いているように聴こえます。さすがセル&クリーヴランド!
有名な「春の声」もダイナミックでシンフォニック。
締めの「常動曲」では最後にちゃんとセル自身の声が聴かれます。

といったふうで、1枚、ヨハン・シュトラウスの「交響詩集」を聴いた気分で楽しめました。

因みに、恒例の年末年始の3枚、「くるみ割り人形」(ドラティ)、「第9」(オーマンディ)、ウィンナ・ワルツ集(セル)と、意図せずしてすべてハンガリー出身の指揮者の録音だったことに気が付きました。
まあ、店主のお気に入りにハンガリーの指揮者が多いからではありますが。
2021年01月01日
 
 

皆様、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

昨年末の話ですが、恒例の2枚、クリスマスの「くるみ割り人形」と年末の「第9」、今回は上の2枚を聴きました。

くるみ割りは、アンタル・ドラティ指揮ロンドン交響楽団の全曲盤。元々は米MERCURY の名録音(1962年)のひとつですが、これは後年オランダPHILIPS からリリースされた2枚組の全曲盤です。
以前、英MERCURY のオリジナル盤でも聴きましたが、また違ったシャキッとした小気味良い音が魅力。
ドラティは後になってPHILIPS 時代にもアムステルダム・コンセルトヘボウ管とも全曲を録音していますが、そちらは落ち着いたスケールの大きさを感じさせるのに対して、ロンドン響盤はもっとストレートでリズムの切れの良さで聴かせます。
ドラティはディアギレフの有名なバレエ・リュス(モンテカルロ)の指揮者を10年間務めていますので、ここでも単なる管弦楽曲ではなく舞台の動きを彷彿とさせる指揮が流石です。
それにしても、くるみ割り人形は2枚分の全曲中、省けるところが見当たらず、全ての部分が素晴らしい音楽の連続で全く飽きさせません。
それを知ると有名な組曲版ではつまらなく聴こえてしまいます。全曲は長くて聴くのが大変、と思っている方も是非一度じっくりお聴きになって下さい。長いと言ってもLP2枚分ですので、大したことはありません。

昔、指揮者の尾高忠明氏が「チャイコフスキーの交響曲は少々ジンタ調であまり好きになれないが、彼のバレエ音楽は素晴らしい。」と言っていました。数十年年を重ねて今、チャイコフスキーの交響曲は彼のもっとも重要なレパートリーのひとつになっていますが。

さてもう一曲、年末の第9。今回はオーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団です。
聴いたことのある方はあまりいないのではと思いますが、実は店主にとっては初めて購入した第9のレコードで、子供の頃から数えきれないほど聴いてきた録音。思い入れの強い演奏です。
ただ、当時買ったのは1枚もの(1,800円で少し安かった)で、聴いていた機器も安い電蓄のようなシステム。詰め込みカッティングで肝心のフィナーレで音が歪んで迫力も足りず、演奏は良いはずと思いながら満足してはいませんでした。

だいぶ後になって入手したのがこの米国COLUMBIA のベートーヴェン交響曲全集で、1961~66年録音の7枚組セット。
一部、3,5,6,8,9番は単発で出ましたが、それ以外はこの全集にしか収録されておらず、事実上このセットがオリジナルと言ってよいでしょう(COLUMBIA 2-eye グレー・レーベル盤)。
嬉しいのが、ここでは第9が1枚半、3面に渡って収録されている点。発売当初のオリジナルであるのと、このゆったりカッティングのお陰でずっと良好な音質で聴けるはず、との期待は見事的中! まさに目から鱗、初めて本来の演奏を堪能することが出来たのでした。
原点回帰と言われる今風の快速調とは異なり(50年以上前ですから当然ですが)、インテンポの安定感あるじっくりした歩みで、バランスが良く、オーマンディが優れたヴァイオリニストであったのを反映して、と言われる通り弦楽器をベースにした厚みのある音色は明るめで、ベートーヴェンのアポロ的な面が映えます。
肝心のフィナーレもこの盤では歪もリミッター感も皆無で、十分なダイナミックレンジで白熱の力演であることが分かります。
アメリカのビッグファイブに入るのはもちろん、中でも屈指のビルトゥオーゾ・オーケストラに育て上げたのは、ストコフスキーとこのオーマンディであったのは、伊達ではありません。
改めて他の8曲もじっくり聴き直してみたいと思います。
2020年12月02日
 

原田慶太楼

本当に久しぶり、フルオーケストラ・コンサートを聴きに行きました。
コロナ禍になってからは海外からの指揮者はほとんど来日出来なくなって、軒並み予定していたコンサートが中止、手元にあったチケットも一体何枚キャンセルになったことでしょう。

サントリーホールで聴くのも久し振り、期待が高まります。
来られなくなった外国人指揮者に代わって、このところ振り始めているのは日本人指揮者。ヴェテラン有名指揮者はもちろんですが、図らずも売り出し中の若手の出演の機会が増えたことは良いことでしょう。
ただ同じお金を出して聴くなら、素晴らしい演奏を聴かせてくれることの分かっているお気に入りの大物指揮者を聴きたいのが本音で、いつもなら聴いたことのない新人の公演にはほとんど行くことがありません。
今回の指揮者、原田慶太楼も聴いたことはなく、実は名前もほとんど知りませんでした。
ただ若手といっても(35才)すでに十分な実績のある人で、音楽の勉強は米国で受け、フレデリック・フェネルを始め、マイケル・ティルソン・トーマス,オリバー・ナッセン,ヘルベルト・ブロムシュテットらに師事、アメリカの数多くの音楽賞を受賞しています。
メーコン交響楽団,ツーソン交響楽団,アリゾナ・フィルハーモニー管弦楽団,リッチモンド交響楽団のアシスタント,アソシエイト・コンダクターを経て、2015年にシンシナティ交響楽団のアソシエイト・コンダクター,2017年にはサヴァンナ・フィルハーモニックの音楽監督に就任。地方オケではありますが、まさに大活躍と言えるでしょう。さらに2017年からはいよいよ東京交響楽団の正指揮者に就任予定だそうです。

こうした経歴から今回のアメリカ大陸の音楽に的を絞ったプログラムは彼の一番得意とするところと思われ、初めて聴くには最適。

[プログラム]
バーンスタイン/オン・ザ・タウン
G.ウォーカー/弦楽のための抒情詩
ピアソラ/ブエノスアイレス変奏曲
コープランド/アパラチアの春
A.マルケス/ダンソン第2番

かなり凝った選曲は彼の地で鍛えられた彼ならでは。
バーンスタインは有名なウェストサイド物語ではないし、コープランドもロデオやビリー・ザ・キッドではありません。
ジョージ・ウォーカー(アフリカ系アメリカ人として初めて音楽院の教授職に就くなどクラシック音楽界での黒人の地位向上に貢献)以外は全てリズムが主体のノリのいい音楽なので、原田は度々ダンスするようなジェスチャーでオーケストラを引っ張ります。
キレのよく自信に満ちた指揮はアメリカでの評判の良さをうかがわせるエンターテインメント性に溢れ、確かに今回のプログラムは最も原田らしさを感じさせるものだったでしょう。

最後のアルトゥーロ・マルケス(1950-、キューバ)の人気曲ダンソン第2番では体全体を使った激しい指揮(ダンス?)で表現、終わった頃にはシャツの裾が全てズボンから出てしまい、苦笑い。
ちょっと日本人離れした国際派として、期待の若手であるのは間違いがないようです。
2020年09月17日
 

yuki AP-0 turntable

由紀精密といってもご存知の方はほとんどおられないと思います。
アンテナの高い方は一部のオーディオ誌や経済紙で紹介されたので、そこでお聞きになっているかもしれません。
(株)由紀精密は金属精密切削加工を専門とする企業で、神奈川県茅ケ崎市に拠点があります。
高い精度を要求する特殊金属加工が得意で、試作から量産までをこなす40人ほどの技術集団です。
取引先は宇宙関連、航空関連、医療関連、電気、大学関連など多岐にわたります。
1961年創立といいますから、すでに60年近い歴史があり、現在3代目社長が腕をふるっています。

そうしたおよそオーディオとは無縁に見える企業がこの6月に突如、ハイエンド・アナログ・プレーヤーを発表したというニュースをたまたま担当者のfacebook 投稿で知り、俄然興味が湧いてすぐに連絡を取りました。
幸い開発陣の一人が私どものことを知っていたこともあって、ほどなく担当者がわざわざ試作機を携えて店に来てくれました。

その際、私どものシステムに繋いで音出しも行い、ただならぬ可能性を感じ、また細部が分かったことで予想以上に独創性溢れることも判明。一方、オーディオ屋から見た率直なお話もさせて頂きました。
プロジェクトリーダーであるこの方が、大のクラシック音楽ファンと分かり、そっち方面の話も弾んであっという間に時間が経っていました。

その後、由紀精密の東京事務所の一角に、急ごしらえではあるものの、実機を見聴き出来る部屋を設けたと聞き、また早速お願いして、両者のスケジュールが合った今日、お邪魔してきました。

事務所は、東京駅から10分ほどのビルの6階にあり、元々は社長室兼応接室であるショウルームは広くは無いもののリラックスした雰囲気で、居心地の良いソファーにかけて聴くことが出来ます。
スピーカーにはソナスファベールのトールボーイを用意、雄大なスケールとはいかないまでも血の通った再生を聴かせてくれ、盤の特徴をしっかりと描き分けていたのが印象的でした。
カートリッジに、誰もが知っているリファレンスということでしょう、DENON DL103 が着けてあったので、これを替えるとまた違った側面も見せてくれるはずです。

前回、試作機の初期ということで未完成の部分もあったのですが、今回はそれを改善して煮詰め、作り替えたので、すっかり安定したプレイバックとなっていました。
それでも担当者はまだ検討中で煮詰めるべき点がいくつかあるということで、それを盛り込み、既に数台オーダーを受けた分も含めて、まず10台の本生産がスタートするそうです。

私どもマエストロ・ガレージでも扱いを開始していますので、何なりとお問い合わせ下さい。
実機視聴ご希望の方はお申し付け下さい。ショウルームは常時解放というわけではありませんので、スケジュールを取ってご用意致します。

詳細は後で製品ページでご紹介します。

*********

実は今日はもうひとつ収穫がありました。
このビルの1階に大変珍しいクロアチア料理の店があったので(国内唯一といいます)、珍しい国の料理というと目が無い店主は事務所に伺う前に寄ってランチしてきました。
なかでは高めのランチ、1200円の「牛ホホ肉の赤ワイン煮」を頼んだのですが、これが大当たり、大満足の良い気分で6階に向かうことが出来ました。
他のランチも食べたいので、由紀精密さん、また呼んで下さいね。


牛ホホ肉の赤ワイン煮
2020年08月10日
 

 

Soulnote P-3

昨日、神奈川県相模大野にあるソウルノート社主催の新製品ミニミニ試聴会に、お得意様2人と参加してきました。
1回が3人までということでミニミニとは言っていますが、4日間、各日2回(各1時間半)の開催ですので全体では結構な規模。これを同社の開発・設計責任者の加藤秀樹氏がひとりで担当するのですから、ご本人にとってはかなりハードです。
今の時期、たくさん集まって試聴会、というのが出来ないための苦肉の策ですが、本当に久しぶりの試聴会となります(うちではいつも1人で聴いて頂くのが普通ですので、今までと変わらず試聴会を行っていますが)。

私たち3人は第2部、午後4時からの回で、試聴室に通されて早速開始です。
店主はもう何回もお邪魔しているお馴染みの試聴室(兼・音質検討室)ですが、お客様にとっては初めてですので、まず機材の説明から。
今回の目玉は発表したばかりの新しいプリアンプ P-3 で、まずはひと通りポイントを説明。設計者自身の解説ですから、カタログには無い開発秘話、ここでしか言えない話が聞きものです。

前半はこうした話題を散りばめながら、ひとつの音楽ソースを使って様々な実験を行いました。これがとても分かり易い。
かつて加藤さんはプリメインアンプがトータルで最も効率よく最適の設計が出来るので、当面はセパレートの開発は無い、と言っていましたが、前回大きな話題となったCD/SACD プレーヤー S-3 の開発での知見もあってブレークスルー、最上級シリーズではいよいよセパレートアンプを手掛けることとなりました。
でも敢えてプリアンプを開発するのなら、それを入れることでより高度な再生が達成されなければ意味が無いとのことで、最初の「実験」はまずプリメインのA-2(2台使ったデュアルモノ使用)で聴いて、その後、A-2 をパワーアンプとして使ってP-3 を接続、同じソフトを聴きました。
使用したソフト(Stereo Sound 誌のリファレンスレコーディング)の冒頭に「虫の音」が聞こえるのですが、ここを聴いただけでその差がはっきり分かります。
もうP-3 を入れないと聴けません(笑)

次が、グラウンド・セパーレーションの実験。
P-3 では左右チャンネルとコントロール系の3つの回路系において、それぞれのグラウンドを完全に分離しています。リアパネルにあるスイッチでそれを一緒に繋げることも出来るので、早速実験。
これもほぼ同じ効果が聴き取れました。リアのスイッチを入れることはないでしょう。

さてもうひとつ、これは加藤さんならではというか、普通のメーカーではまず却下という内容ですが、音質を頭打ちにしている原因を見つけると絶対に見過ごすことが出来ない加藤さん、何とかして製品として成り立たせながら音質を阻害する要因を取り除く工夫をします。
ACインレット(電源ケーブルを挿し込む受け口)に音の良さから大変高価なパーツを使うことになったのですが、なぜかこれを本体ボディにしっかり留めると音が死んでしまいます。
そこで苦心して本体筐体には留めずに巧妙な固定方法で解決。
まずそのまま聴いてから、特別にビスを使ってわざと筐体にインレットを固定して聴くと、あら不思議、これまた同じように平板な響きとなってしまいます。

同じようにディスクプレーヤーS-3 でも、ノンオーバーサンプリングとFIR オーバーサンプリングの音を聴き較べましたが、これもまた今まで試してきた実験と同じような差が感じられ、オーバーサンプリングでは音が平板に聴こえるのが興味深く感じられました。

不思議なことに、いずれの「実験」でも同じように音質が変化するので、加藤さんが裏で音質悪化スイッチを入り切りしているのでは?と思うほど(笑)でしたが、すっかり加藤ワールド体感コーナーを楽しませて頂きました。
加藤さん、百貨店の実演販売コーナーをやったらすごく売り上げるのでは、などと考えていました(これはもちろん感心しています)。

その後後半は、お客様2人がそれぞれお持ち下さったCDを片っ端から聴きまくり、ほとんどでぶったまげ、ソウルノートの実力にやられました。そうそう、試聴室リファレンスのスピーカー、PMC MB2-SE も最高のサウンドで応えてくれました。単なるモニタースピーカーに留まらない、素晴らしいスピーカーです。

気が付くと、大幅に終了予定時間を過ぎていました…。どの回も同じ状況なんだろうなあ。加藤さん、お疲れ様、ありがとうございました。
2020年06月21日
 
 
 
杉並公会堂を拠点とする日本フィルと、杉並公会堂&杉並区が共同で企画した「コロナ収束を願うコンサート」を聴きに行きました。

この特別企画は6月18日と19日、各日100名(ホール客席は1,190 席)で開催、区民公募(抽選)により行われました(無料)。
写真のようにシートに番号が貼られた指定席で、何人も空けて座るようになっています。
後ろの方だった私の席の列では他に座る人が無いくらいに空けてありました。いつものコンサートでは隣の人に腕がぶつからないように気にしながら座っていますが、今回は楽々、いつもこれくらいだと楽だなあ、などと思いましたがこれでも満席です。

午後2時から1時間強、正味50分ほどの公演で、日フィルの弦楽器メンバー4人によるカルテットが、だれもが楽しめるようにクラシックばかりでなく懐メロ(「憧れのハワイ航路」)や映画音楽(「80日間世界一周」),スウィングジャズ(「A列車で行こう」)など親しみのあるメロディばかりが続いて飽きることなく楽しむことが出来ました。
途中、第1ヴァイオリンの方が、曲についてだけでなくこれまでの苦労や日フィルの現状についてコメントしながらの演奏でした。

日本フィルはこれに先駆けて10日にサントリーホールで無観客によるライヴ配信コンサートを敢行していて、この模様は昨日(21日)にNHK で放送されていましたが、観客がいないため拍手などリアクションも無くしーんとして、どうしても違和感は免れません。奏者の方が「寂しいなあ、疲れた…。」と漏らしていたそうですが、今回のコンサートでは聴衆が居るのでちゃんと拍手も起こり、演奏会の確かな手応えがありました。

先日、楽団理事長の平井俊邦氏(元銀行マンで、企業再建に手腕を発揮してきた方です)が日経の取材に応じて日フィルの窮状を訴えていましたが、年間の半数ほどのコンサートを中止せざるを得ず、そのため年4億円の赤字になり債務超過に陥ると予想しているとのこと。自治体の予算や支援母体に頼らない自主運営の公益財団法人であるため、今までに無い存続の危機に陥っているのです。
 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59570400W0A520C2BC8000/
 
https://www.japanphil.or.jp/orchestra/news/24224
 

杉並公会堂玄関前のシンボル 
2020年06月01日
 

BAYZ Audio Courante

お客様の希望で、BAYZ Audio ベイズオーディオという新しいメーカーのスピーカー Courante クーラントをご自宅に持ち込んで試聴して頂きました。

写真をご覧頂くと分かるように、ほとんど類を見ない独創的な外観にまず目を奪われます。ちょうど鎖の輪のひとつのような、太いパイプを長方形状に繋いだように見える(実際そうなのですが)造形は、現代彫刻として美術館に展示してあっても違和感がないほどです。

恐らくこの形状と細部を見て、「なるほどいい音がしそうだ」と直感する方と、「こんな変わった形でまともな音はしないだろう」と考える方とに見方は大きく分かれるだろうと思います。ちょうどかつてのB&W オリジナル・ノーチラスのように。
このお客様はもちろん前者で、ひと目で自分の今求めている音の出方を実現してくれる可能性を直感されました。

私自身もこのスピーカーは昨年の東京インターナショナルオーディオショウで是非聴いてみたい筆頭だったのですが、デモの時間帯が合わず聴けずじまいでした(ステラ/ゼファン・ブース)。
話題になりましたから、この時実際にお聴きになった方もおられるでしょう。
そんなこともあって今回この機会に聴くのを楽しみにしていました。

実はこのスピーカー、形状と同じくらい驚く点がもうひとつあります。
重量です。
高さが約1.4m、奥行き40cmあるにもかかわらず、13kg しかないのです(分離出来る台座を除く)。はるかに小さな当店リファレンスの小型ブックシェルフ・スピーカー、パラダイムのPersona B が14kgですから、これよりも軽いことになります。
これは本体の材質に秘密があります。F1カーのモノコックボディや競技用飛行機に使用される、特許のコンポジット材(PMC)で出来ているからです。
設計者のゾルタン・ベイ氏は通常の常識とは正反対に、超軽量なキャビネットを目指しました。
とにかくこのスピーカーは技術的な特徴が盛り沢山で、ここではご紹介しきれませんので、ご興味のある方はこちらをご覧下さい↓
https://www.zephyrn.com//bayzaudio/page/courante.html

大きなスピーカーであるにもかかわらず出張デモがスムーズに行えたのは、この軽さのお陰でした。
高さはあるものの幅は19cmと、トールボーイ・スピーカーほどの専有面積しか必要としないので設置も楽、後々のセッティング調整も簡単です。

さて実際に鳴らした結果は、まずは置けるところに「ポン置き」だったにもかかわらず、お客様のリスニングスペースが十分大きかったのも奏功して、始めから充実のサウンドを披露。
全方位スピーカーというと、どうしても少し特殊な鳴り方、音が拡がってスピーカー自体から音が出ているという感覚から解放されるものの、音像が捉えにくかったり、音場の緻密さに欠けるなど、トレードオフの点もあるように感じていました。

しかしクーラントは全方位型として期待する音場の拡がりが素晴らしいのはもちろん、かつ、通常のスピーカーのような音像定位の気持ち良さも兼ね備えているので、いつものスピーカーで聴くのと同じように楽しむことが出来るのです。能率の良さもあるのでしょう、音が細くならずリスニングポイントに届いてくるので実体感もあります。
しかしやはり、2つのスピーカーの外側を大きく超えて部屋の前方一杯に拡がるステレオイメージは何といってもこのスピーカーだけのもの。

ジャズ・トリオをバックにしたヴォーカルを聴きましたが、これはまさに部屋の一角に彼らを招いて演奏してもらっているよう。通常の優れたスピーカーはピンポイントでヴォーカルが浮かびますが、浮かび上がるのは「口」(くち)。クーラントではほぼ等身大の歌い手のボディそのものが「見える」のです。
また、カラヤン一世一代のスペクタクル、ヴェルディの「アイーダ」(ウィーン・フィルとの新録音)では、ほとんど天井知らずのダイナミックレンジと広大なステージを提示、もう脱帽!
そのまま即決で導入頂きました。誠にありがとうございます。

特別なスピーカーではありますが、多くの方に聴いて頂きたい製品です。
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